2022 Fiscal Year Research-status Report
エズラ・パウンドの「辺境」意識:その変遷と儒教およびファシズム
Project/Area Number |
18K00412
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長畑 明利 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (90208041)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | パウンド / 辺境 / 納西族 / 儒教 / ファシズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀に活躍したアメリカのモダニズム詩人エズラ・パウンドの経歴の初期から晩年に至る詩作品のうち、東アジアに題材を得たもの、および、関連する評論、書簡などを取り上げ、(1) それらに現れる彼の「辺境」意識の変遷を明らかにすること、(2) その変遷の意味をパウンドのファシズム支持および儒教への傾倒に照らして解明すること、(3) 彼の辺境意識の変遷を手がかりに、『詩篇』中の「玉座詩篇」および「草稿と断片」に収録された中国雲南省の少数民族「納西族」を題材とする詩篇(「納西詩篇」)を再評価することを目的としている。 2022年度は、前年度から引き続き、パウンドの詩テクストのうち、中国に関連する作品に見出されるパウンドの「辺境」意識の変遷を、彼の儒教への傾倒と の関連から検討する研究を進める計画であったが、新型コロナウィルス感染症流行の影響により、国内外の移動が依然として困難を伴うなどの理由で、あらたに研究を進展させることが困難となった。そのため、入手済みの文献に基づく調査を部分的に進めるとともに、これまでに行った研究成果を発表するための作業を継続して行うこととした。その成果の一部は、6月24日から26日にかけてオンラインで開催された国際学会 29th International Ezra Pound Conference(当科研研究代表者は共同呼びかけ人の一人) におけるワークショップでの報告内容に加えた。また、パウンドが1930年代後半に執筆した中国詩篇の一篇(「詩篇 60」)を論じた英文論考を含む共著 Readings in the Cantos, Volume 2 が出版された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、国内外での調査出張が困難である状況が続き、また、上半期を中心に、感染防止のためのオンライン授業対応等に伴う各種業務の多忙化が継続したため。パウンドの「納西詩篇」およびそのソーステクストの著者であるジョゼフ・ロックに関する中国雲南省麗江もしくはハーヴァード大学図書館への調査出張を検討したが、出張計画時点では通常の渡航状況への回復が見込まれず、断念した。
|
Strategy for Future Research Activity |
パウンドの詩テクストに現れる彼の辺境意識の変遷についての検討を継続して行うとともに、「納西詩篇」およびそのソース・テクストである The Ancient Nakhi Kingdom of Southwest China を執筆した ジョゼフ・ロックについての研究、その他の辺境意識に関連する研究を進める。渡航状況が回復した場合は、現地調査を実施する。研究成果の一部は国際エズラ・パウンド学会等で発表する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症流行の影響により、前年度に引き続き、パウンドの「納西詩篇」およびそのソーステクストの著者であるジョゼフ・ロックに関する現地調査が困難となり、また、オンライン対応などに伴う業務の多忙化状況が継続した。これらの理由により、計画通りの研究の遂行が困難になったため、基金の延長を申請し、認められた。
2023年度には、2022年度に実施できなかった、パウンドの詩テクストに現れる彼の辺境意識の変遷についての研究、「納西詩篇」およびそのソース・テクストの著者ジョゼフ・ロックについての研究を継続して進めるが、渡航状況が回復した場合は、2022年に計画した現地調査を実施する。また、研究成果の一部を国際エズラ・パウンド学会(6月にエジンバラ大学で開催)等で発表する。これらの研究費・渡航費に次年度使用額を使用する。
|