2020 Fiscal Year Research-status Report
古・中英語期における女性聖人伝の系譜研究:Aelfricのテクストと言語を中心に
Project/Area Number |
18K00431
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
島崎 里子 昭和女子大学, 文学研究科, 准教授 (90276618)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古英語 / 中英語 / 聖人伝 / 女性 / エルフリック / 系譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、当初の研究計画では3年計画の最終年度に当たる。この年度は、前年度までに完成した古・中英語期の女性聖人を網羅したカタログ・データベースを利用して、系譜の観点から抽出した女性聖人伝について、各時代の代表的な作家(Aldhelm, Bede, Old English Martyrology, Aelfiric)たちの英語版テキストとその原典であるラテン語版テキストを比較対照し、テクストと言語の両面からそれぞれの作家たちが描く女性像の特徴を明らかにすることを目指していた。 しかし、COVID-19の感染状況の悪化に伴う大学業務の増大で、研究にかかるエフォートの割合が大幅に減少した上に、海外への渡航が不可能となったことで、英国図書館でのテキスト原典写本の閲覧に大きな支障が生じ、分析の基盤となるパラレルテキスト(diplomatic edition)自体も完成には至らなかった。 他方、オンラインでの閲覧が可能な写本については、画面の代用で確認作業を少しずつ進めている現状である。それ以外の写本については、作業を一時中断し、渡航制限が解除され、現地図書館での閲覧が可能になった時点で再開したいと考えている。その間、確認の終わったテキストから先に、パラレルテキストを完成し、テクストと言語の比較対照作業に入っている。 全体として当初の研究計画についての大幅な変更を余儀なくされてしまった中、軌道修正を図りつつ課題の遂行に努めたが、残念ながら、学会や研究誌等に成果を発表するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年までやや遅れ気味であった当初計画の進捗状況が、令和2年度に大きく遅れてしまった理由として以下の2つが挙げられる。 ひとつは、Covid-19の感染拡大とそれへの対応によって生じた大学業務が激増したことで、個人的な研究活動に充てられる時間が大幅に減少してしまったことである。 もうひとつは、海外渡航が不可能となったことで、本研究課題の基盤となる新たな電子テキスト作成に不可欠な英国での原典写本の閲覧・確認作業が実施できなかったことである。オンラインでの閲覧が可能な写本については、画面の確認で代用しつつ作業を進めているが、それ以外の写本については、一時の中断を余儀なくされているのが現状である。パラレルテキストの校訂作業を完了させることができなかったことで、本研究課題の最終目的である、女性像の分析もまた遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の目標であった、古・中英語期の女性聖人について、系譜の観点からパラレルテキストを完成させ、そこからそれぞれの作家の女性聖人伝の特徴を、言語とテクストの両面から考察していく。 そのためにまず、依然としてCOVID19の影響下ではあるが、海外の図書館所蔵の写本でオンライン閲覧が可能なものから重点的にdiplomatic editionの校訂・点検作業を行っていく。それ以外のものについても、渡航制限の解除を待ちながら、現地図書館と緊密に連絡を取りつつ次善策についてアドバイスを求め、各作家の言語的特徴の分析を行うに足る精度の高いパラレルテキストを完成させたい。また、この作業と並行して、個々の聖人伝のテクストと言語の比較対象作業を行って、系譜の観点から女性像の分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
テキスト校訂作業のために英国各地の図書館が所蔵する原典写本の閲覧を予定していたが、COVID-19の感染拡大の影響で令和2年度には渡英することが不可能となったため、渡航制限の解除を待つべく研究期間を延長し、令和3年度での渡英に備えて計画の修正を行った。 そのため、それに伴う渡航費用等の予算を確保する必要が生じ、令和3年度へ予算の繰り越しを行った。
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