2020 Fiscal Year Research-status Report
Accidental Sense of the Local in the 21st Century American Fiction
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18K00437
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
藤井 光 同志社大学, 文学部, 教授 (20546668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現代アメリカ文学 / 英語圏文学 / 新自由主義 / 歴史表象 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、グローバル化・無国籍化の度合いを強める傾向にある21世紀のアメリカ文学において、特定の土地や歴史に対する密着性がどのように描かれているのかを検証することを目的としている。2020年度は学会発表と現地調査・作家へのインタビューなどを予定していたが、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく変更を余儀なくされ、予定していた二度の学会発表はいずれも2021年度に延期となった。2020年度に出版された実績は以下の通りである。 1)共著『深まりゆくアメリカ文学:源流と展開』(竹内理矢・山本洋平編著)中の「現代文学」欄を担当し、21世紀のアメリカ文学を特徴づける要素として、同時多発テロからイラク戦争へという戦争文学の系譜、そして新自由主義経済の隆盛による格差と差別の再浮上を挙げた。 2)共著『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(書肆侃侃房)にて、合計6章の執筆を担当し、アメリカおよび東南アジアの英語作家の小説から浮かび上がる、現代社会への批判的眼差しと、文学とその受容という体制そのものへの批判的な主題を分析した。 いずれも、現代小説がその内部と外部において経済と文学との関係を大きく取り込もうとしており、新自由主義がもたらしたグローバル経済がそれぞれの小説の舞台に対する収奪関係を結んでいることを描き出す点を考察した点が、本年度の達成だったと言えるだろう。 なお、人種差別の歴史を掘り起こすことを試みるコルソン・ホワイトヘッドによるピューリッツァー賞受賞作『ニッケル・ボーイズ』、およびパンデミックという設定を借りてグローバル化した物流と人の移動がもたらした流動性を検証するリン・マーの『断絶』を翻訳する機会を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大にともない、学会発表が延期となったほか、海外出張も不可能となり、2019年度に引き続いて移動を伴う研究活動が大きく制限された。また、大学での教育活動において、オンライン化などの対応にかなりのエフォートを割かざるをえなかった点も、研究に遅れを生じさせた要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、国内学会でのシンポジウム発表を二度予定しているほか、2020年度に項目を執筆した現代作家事典の刊行も予定されており、研究実績は通常のペースに戻るものと考えている。その他、オンライン化での研究環境が整ってきたことも積極的に活用していきたい。
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Causes of Carryover |
国内・国外での学会発表および現地調査の類の移動ができなかったことにより、予定していた支出項目の多くを執行することができなかった。同様の事態は2021年度も続くものと予想されるため、新たな研究環境の構築を目指したい。
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[Book] 断絶2021
Author(s)
リン・マー、藤井 光
Total Pages
348
Publisher
白水社
ISBN
9784560090671
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