2019 Fiscal Year Research-status Report
Toward the Adaptation of the Ancient Literature in the Midde Ages by means of the Old French and Middle High German Translations of "Aeneis"
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18K00442
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石井 正人 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (50176145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウェルギリウス / アエネーイス / 古仏語『エネアス』 / ハインリッヒ・フォン・フェルデケ / 中高ドイツ語『エネアス』 / 西洋古典文学 / 西洋中世文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウェルギリウス『アエネーイス』(Publius Vergilius Maro: Aeneis)と、その古仏語への翻案ヴァージョン(作者不詳:Le Roman d’Eneas)と中高ドイツ語への翻案ヴァージョン(Heinrich von Veldeke: Eneasroman)を比較考察し、物語構造の変遷と時間概念の転位を中心に、古典古代の文学素材の盛期中世における受容方法を調査することで、その「汎ヨーロッパ化」「普遍化」「共通財化」のプロセスと本質を明らかにすることである。 本研究の方法は、アエネーイスのラテン語原文と古仏語・中高ドイツ語翻案版のテクストを比較検討し、物語の「統一的時間軸」の確定手段と、その変遷を調査する。物語における「統一的時間軸」確定手段を次の2点において捉える:1. 動詞時制・接続詞・副詞等の文法カテゴリーによってエピソードの前後関係を明確にする。2. エピソード連結の終結(区切り)を納得させる「終止感・解決感」を内容的に(倫理的にあるいは価値観的に)明確にする。 研究第2年度である本年度は、ラテン語原典のウェルギリウス『アエネーイス』の分析を進め、全12章の分析を一応終えたところである。まだ論文として公表するに至らないが、動詞アスペクトの用法に従来注目されていない特徴が見いだされた。伝統的にラテン語の動詞アスペクトは、完了・未完了・アオリストの3アスペクトから構成され、アオリストに関しては形態上の特徴を失ったが、用法は完了形に吸収されたものと考えられている。昨年度はアオリストの特徴づけを調べたが、その過程で、逆に未完了の機能にもさらに考察すべき余地があること、また付随的にconjugatio periphrasticaの伝統的文法記述の問い直しに問題意識が進んだ。この点については中間発表的な論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 本研究の目的は、ウェルギリウス『アエネーイス』(Publius Vergilius Maro: Aeneis)と、その古仏語への翻案ヴァージョン(作者不詳:Le Roman d’Eneas)と中高ドイツ語への翻案ヴァージョン(Heinrich von Veldeke: Eneasroman)を比較考察し、物語構造の変遷と時間概念の転位を中心に、古典古代の文学素材の盛期中世における受容方法を調査することで、その「汎ヨーロッパ化」「普遍化」「共通財化」のプロセスと本質を明らかにすることである。 本研究の方法は、アエネーイスのラテン語原文と古仏語・中高ドイツ語翻案版のテクストを比較検討し、物語の「統一的時間軸」の確定手段と、その変遷を調査する。物語における「統一的時間軸」確定手段を次の2点において捉える: 1. 動詞時制・接続詞・副詞等の文法カテゴリーによってエピソードの前後関係を明確にする。2. エピソード連結の終結(区切り)を納得させる「終止感・解決感」を内容的に(倫理的にあるいは価値観的に)明確にする。 研究第2年度である本年度は、ラテン語原典のウェルギリウス『アエネーイス』の分析をさらに進め、全12章の全体の分析をだいたい進めたところである。なお不明の点や、分析の結論を保留したところが多く、論文をまとめて公表する状態にはないが、新たな問題点をいくつか発見し、そのうち重要な問題であると思われる conjugatio periphrastica の伝統的文法記述の問い直しについては中間発表的な論文を公表した。 最初の2年間をラテン語原文の徹底的再検討に費やす計画であるので、おおむね予定量を達成したことになり、研究計画は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、ウェルギリウス『アエネーイス』(Publius Vergilius Maro: Aeneis)と、その古仏語への翻案ヴァージョン(作者不詳:Le Roman d’Eneas)と中高ドイツ語への翻案ヴァージョン(Heinrich von Veldeke: Eneasroman)を比較考察し、物語構造の変遷と時間概念の転位を中心に、古典古代の文学素材の盛期中世における受容方法を調査することで、その「汎ヨーロッパ化」「普遍化」「共通財化」のプロセスと本質を明らかにすることである。 本研究の方法は、アエネーイスのラテン語原文と古仏語・中高ドイツ語翻案版のテクストを比較検討し、物語の「統一的時間軸」の確定手段と、その変遷を調査する。物語における「統一的時間軸」確定手段を次の2点において捉える:1. 動詞時制・接続詞・副詞等の文法カテゴリーによってエピソードの前後関係を明確にする。2. エピソード連結の終結(区切り)を納得させる「終止感・解決感」を内容的に(倫理的にあるいは価値観的に)明確にする。 研究第2年度である本年度は、ラテン語原典のウェルギリウス『アエネーイス』の分析を進め、全12章の分析をおおむね終えたところである。まだまだ未解決な点が多く、保留のままの個所もあったが、conjutation periphrastica の伝統的文法記述の問い直しについては中間発表的論文を公表できた。 3年目にはラテン語原典のウェルギリウス『アエネーイス』の分析をさらに深め、それを元に古仏語ヴァージョンの "Le Roman d’Eneas" との比較研究を進め、4年目に中高ドイツ語ヴァージョンのハインリッヒ・フォン・フェルデケの "Eneasroman" との比較研究を進め、最終年度に総合的に三者の比較検討をまとめる予定である。
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Research Products
(3 results)