2020 Fiscal Year Research-status Report
Eine Untersuchung ueber die Entwicklung des Fiktionsidees und die Entstehung der innerlichen Darstellung von der deutschen Romantheorie im 18. Jahrhundert
Project/Area Number |
18K00458
|
Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
北原 寛子 北海学園大学, 経済学部, 教授 (60382016)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ドイツ文学 / 教養小説 Bildungsroman / 小説理論 / 18世紀 / 19世紀 / スイス派 / 想像力 / ヴィーラント |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、ドイツ18世紀小説理論における想像力と虚構観について研究を進め、「世界は学び舎、人間は学徒 ――スイス派『想像力の影響と使用について』における「想像力」――」を北海学園大学学術研究会編『学園論集』第183号に発表した。ここでの研究成果は、当時想像力が内的活動としては否定され、目の前にないものを見るという形で視覚という身体的な活動と密接に関連付けることをよしとする見解があったことを明らかにしたことである。想像力は時代を超えた普遍的な概念ではなく、時代の経過とともに変化・発展しているという論者の仮説を補強する分析結果となった。 また2019年夏の札幌におけるアジアゲルマニスト会議の成果が「Von der Veraenderung des Menschenbildes und dessen Einfluss auf die Romantheorie im 18. Jahrhundert」として論集Einheit in der Vielfalt? Germanistik zwischen Divergenz und Konvergenz.(Hrsg. von Yoshiyuki Muroi, Tokyo u. Muenchen; Indicium. 2020)で発表された。本論では、1790年代にドイツの近代小説がBildungsromanという形式にをとって始まるという従来の説に異を唱え、18世紀初頭の小説非難論への反論が現在のBildungsroman論の端緒であるとする議論を展開した。本論をオーストリアのドイツ文学研究者(了承をとっていないのでここでは名を伏せる)に送付して意見を求めたところ、主張に賛同を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナウィルスのまん延により教育活動に多大なエフォートを要する事態となった。その中でもなんとか本研究のために時間を割き、仮説を補強する分析結果を得るなど、一定の成果を出すことができた。しかしドイツ・オーストリアに資料収集と意見交換のために赴くという当初の予定を実行することができなかった。実績概要でも述べたように、メールその他の方法でドイツ語圏の研究者と意見交換は行ったが、直接意見を交換し、さらに議論を発展させることができなかった。そのため2021年度も延長して研究を行い、18世紀の虚構観を小説理論から分析する研究を継続することになった。2020年度は18世紀半ばの代表的な歴史学者クラデニウスによる『一般歴史学』(1752)を分析し、当時の歴史学と小説理論の親近関係について考察し、18世紀後半に虚構観や内面描写の技法がどのように発展したのかについて議論する予定であったが、それについてはコロナ禍による教育活動へのエフォートの増大と資料収集の難航により叶わなかった。この点により、本研究プロジェクトはやや難航していると言えなくもないが、しかし一定の進捗はしており、当初の計画はそれなりに遂行できていると判断する次第である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は上述のようにクラデニウスを中心に18世紀半ばのドイツにおける歴史学と小説理論の関連について分析・考察する予定である。1770年代以降の小説理論では、歴史と小説を区別するための基準として内面描写を主張するブランデンブルクらの著作が登場するので、その時期の実際の作品例として、クリストフ・マルティン・ヴィーラントの『テアゲネス』(1758)や『新アマディス物語』(1764)などの小説を取り上げて考察を進める予定である。スイス派とスイス派と直接関連を持ったヴィーラントの文学活動を取り上げながら、イギリス経験論によって発展した主体への意識がどのようにドイツの文学理論に影響を与え、やがて虚構という文学独自の領域を発展させるにいたった過程を明らかにしていく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのまん延により、資料集と意見交換の機会が大幅に損なわれたため、また教育活動に多大なエフォートを要したため。
|