2021 Fiscal Year Research-status Report
Eine Untersuchung ueber die Entwicklung des Fiktionsidees und die Entstehung der innerlichen Darstellung von der deutschen Romantheorie im 18. Jahrhundert
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18K00458
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
北原 寛子 北海学園大学, 経済学部, 教授 (60382016)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 18世紀ドイツ / 小説理論 / 内面描写 / 虚構観 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究の成果を2本の論文として発表した。1つは「18世紀半ばドイツにおける歴史学と小説 ―クラデニウス『一般歴史学』を小説理論から読む―」(北海学園大学学園論集 第186号)である。18世紀ドイツでは、小説はしばしば歴史と類似のジャンルとして論じられていたため、当時の歴史学における出来事の認識について確認するためにこのテーマを取り上げた。クラデニウスの歴史学は当時としては先進的だった。その理由は、出来事を認識し、客観的に叙述する方法を主張したからである。現在となっては当たり前すぎることではあるが、「あり得たかもしれない歴史」の名のもとに想像したことが歴史記述に混入することが許容されていた当時としては斬新な姿勢であった。一方で歴史が読者の教示に役立つという認識は、当時はごく当然だったので、特別な章が設けられることもなく随所に確認することができた。小説が人々の教育に役立つことを強調していた18世紀後半の小説理論との認識の共通点を確認することができた。 2つ目の研究成果は「「すべての叙事文学の中間物」―18 世紀小説理論の展開から読むヴィーラント『新アマディス』―」(北海道大学独語独文学研究年報 第47号)である。18世紀ドイツ文学における虚構観形成の重要な作家の1人がヴィーラントである。『新アマディス』は小説ではなく韻文の作品である。モンタルボの『アマディス物語』は小説であるが、ヴィーラントは騎士道物語を散文ではなくあえて韻文で語った。これにより、ジャンルと作品内容が密接に関係していた当時の詩学の規範を揺るがしたといえる。ジャンルと内容のステレオタイプが克服されることで、小説が内容的に進化することが可能になったとの結論を導いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による渡航延期等で、資料の入手などが遅れることになったが、研究期間を延長したことにより資料の準備や分析を進めることができ、上述のように研究成果を発表するところまでたどり着けることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究は、ヴィーラントとロマン派の確執を通じて、18世紀ドイツ小説理論における虚構観の発展の最終的な様相について考察することが目標である。ヴィーラントは昨年度の研究で取り上げた『新アマディス』にみられるように、文学作品の虚構性を意識し、許されうる限りの自由闊達さでもって遊戯していた。彼の作品世界は、虚構であるという認識をのもとに構築されており、虚構と現実は明白な二項対立をなしていた。それに対してフリードリヒ・シュレーゲルに代表されるロマン派の理論は、虚構と現実の対立を無限に反復することによって、意識の無限の深みに達することを目指していた。ヴィーラント的な明快な2項対立としての虚構と現実は、18世紀末に活動を開始した若い世代の詩人たちにとっては、あまりに明快すぎ、単純すぎ、とうてい許容できる姿勢ではなかった。このような虚構観の発展について、具体的なテクストを示すことによって論述していく予定である。
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Causes of Carryover |
書籍等を購入するために、前年度使用が生じた。
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