2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス第三共和政における文学と都市計画──ゾラとトニー・ガルニエ
Project/Area Number |
18K00472
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
彦江 智弘 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80401686)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文学と都市計画 / ゾラ / ル・コルビュジエ / 第三共和政 / アナキズム |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、「研究の目的」のうち、第三共和政期の都市計画と文学の問題の整理を中心に取り組んだ。 これに取り組むにあたって、文献調査と現地調査の2つのアプローチを採用した。前者については、主にパリのBPI(Bibliotheque d’information publique)等で調査を行った。網羅的な研究に取り組むには膨大な作業が要求されるわけだが、ここでは本研究において重要な位置を占めるゾラの『パリ』(1898)や『労働』(1901)が執筆された1890年代に焦点を絞った。これらのテクストを起点に作業を進めるなかで判明したのが、この時期活発な活動を行っていたアナキズムがある種の文学者や芸術家を引きつけたことである。例えばクローデルや新印象派の画家や批評家である。ここから、当時進展しつつあった近代都市計画に対する文学や芸術的感性のあり方の一つとして、ゾラを初めとするアナキズムに接近した文学者や芸術家たちを導入することができるのではないかという視座をえた。この問題は引き続き検討したい。 一方、現地調査ではむしろ通時的な観点からの調査を行った。今回、ゾラが『労働』を執筆した際に取材したサン=テティエンヌを訪問し、19世紀における工業都市としての側面と20世紀における近代都市計画によるその変貌を中心に調査を行った。とりわけ後者については、第二次大戦後ル・コルビュジエが手がけたフィルミニーの再開発地区に着目した。 研究の具体的な成果としては、文献調査で得た知見を以下の本のなかで発展応用させ。都市と芸術文化の問題を論じた。榑沼範久・彦江智弘「都市のスケールとリズムについて」吉原直樹・榑沼範久(編)『都市は揺れている 五つの対話』東信堂、2020.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究を遂行する上でさらに海外での文献調査・現地調査の必要性が高まっており、当該年度も2回フランスでの調査を計画していたが、新型コロナウィルス感染症の拡大のため、これを1回にとどめざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査・研究を活かして、ゾラの『労働』の分析を試みる予定であるが、海外でのさらなる文献調査・現地調査が不可欠である。しかし現状では新型コロナウィルス感染症対策のため渡航が困難であり、この先の研究遂行に支障がでることが危惧される。
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Causes of Carryover |
ごく軽微な残額が生じたが、次年度に繰り越し事務用品などの購入にあてる。
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[Book] 都市は揺れている2020
Author(s)
吉原直樹、榑沼範久、都市空間研究会
Total Pages
176
Publisher
東信堂
ISBN
978-4-7989-1636-1