2021 Fiscal Year Research-status Report
フランス第三共和政における文学と都市計画──ゾラとトニー・ガルニエ
Project/Area Number |
18K00472
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
彦江 智弘 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80401686)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | エミール・ゾラ / 都市計画と文学 / トニー・ガルニエ / フランス第三共和政 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も新型コロナウィルス感染症が未だ収束しないため、フランスでの資料調査を行うことができなかった。そのため当初の計画からの変更を余儀なくされた。そこですでに収集した資料を活用して、本研究課題において中心的な位置を占めるゾラの『労働』(1901)から遡って、都市計画の問題に関わる主題の萌芽をゾラの『制作』(1886)に見いだすことを試みた。 『制作』は印象派界隈の芸術家をモデルとする芸術家小説として知られるが、同時にパリを主題化した都市小説としての側面を有している。今年度は『制作』のこのような側面に「労働」という観点も交えてアプローチした。「労働」は『パリ』(1898)や『労働』などのゾラの都市小説に内在する重要なテーマの一つである。このような読解から、すでにこの時期においてゾラが都市を労働をめぐる分断によって画された場として表象しており、このような分断の止揚を模索することを芸術の社会的機能として措定していることが浮かび上がってきた。 このような分析の意義の一つは、ゾラの『制作』のうちに芸術と都市計画との交差の一様体を見て取ることを可能にした点である。またその一方で、普段関連づけられることのない、ゾラの最晩年のユートピア小説(『労働』)と芸術家小説である『制作』とをつなぐロジックを明らかにしたことも本研究の成果の一つとして指摘しておきたい。なお研究成果は以下の論文として公表した。「エミール・ゾラの『制作』における労働と都市―新印象派の方ヘ―」(『常盤台人間文化論叢』第8号、2022年3月、p. 31-47)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症のため海外渡航が制限され、当該年度もフランスでの文献調査が実施できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の発生状況が改善傾向にあるため、本年度はフランスでの調査を実施し、研究の綜合に取り組む。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の発生状況に鑑み、フランスでの文献調査等が出来なかった。今年度は発生状況が改善傾向にあるため、調査を実施する予定。
|
Research Products
(1 results)