2023 Fiscal Year Annual Research Report
Abnormals in Enlightenment thought: a literary and philosophical study of eunuchs
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18K00489
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
桑瀬 章二郎 立教大学, 文学部, 教授 (10340465)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | モンテスキュー / ヴォルテール / ルソー / 啓蒙思想 / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年は、令和4年に引き続き、令和3年段階で明確化した研究計画の全体像をもとに、その完成に向けた作業を進めた。その研究計画は当初の研究実施計画から、変化し、深化したものであった。すなわち①「宦官」の表象の象徴例としてモンテスキュー作品の分析から出発し、②啓蒙期の「カストラート」論を分析した後、③いわゆる歴史叙述の検討から「去勢者たち」をめぐる歴史的記述を再検討し、④博物誌的、生理学的、哲学的視点からの分析へと進み、⑤最後に①~④を18世紀フランスの代表的思想家の生/性の表と関係づける、というものである。 本年度はとりわけ③の「去勢者たち」をめぐる歴史的記述の再検討を集中的に行った。ヴォルテールの通称『習俗論』の批評校訂版を読み込むことで、分析軸を明確にすることができた。そのさい、令和4年の段階で浮上し、獲得した視座が重要な意味を持った。フランス啓蒙の知識人たちによってイスラームがいかに歪められ、それがいかに我有化されたか、すなわち、「去勢者たち」をめぐる歴史的記述における、俗にいう「オリエンタリズム」の影響への目配せである。 これらの作業は、予期せぬ成果をもたらした。令和5年に刊行した『ジャン=ジャック・ルソー 』に本研究を遂行する過程で得た知見を反映させることができた。具体例を挙げれば、『人間不平等起源論』におけるイスラームの重要性、『社会契約論』におけるムハンマドの重要性を叙述に織り込むことができた。 ただ、当初の研究実施計画では、「宦官」と「カストラート」といった「去勢者」の視点からなされた18世紀フランス思想・文学についての総合的研究を提示することが最終目的であるとし、統一的総合的視座を一冊の書物(単著書)として刊行する予定としていた。この作業にかんしては大幅に遅れているため、一刻も早く実現できるよう、本年度以降も作業を継続していく予定である。
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