2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on the early poetical works of poet-thinker Muhammad Iqbal
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18K00504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松村 耕光 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (60157352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イクバール / ウルドゥー詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度においては、南アジアの重要なイスラーム思想家の一人であり、優れたウルドゥー語・ペルシア語詩人でもあったムハンマド・イクバール(Muhammad Iqbal, 1877-1938)の、インド・ナショナリズムの影響下にあったとされる、1905年のヨーロッパ留学以前の文学的・思想的特徴を検討するために、以下のような研究を行った。 (1)イクバールのウルドゥー第一詩集『鈴の音(Bang-e Dara)』(1924年)のテキストとウルドゥー語雑誌『宝庫(Makhzan)』(1901年4月創刊)掲載時のテキストとの校合。詩集『鈴の音』収録時にイクバールは詩句の削除、追加、改変を行っているので、初期イクバールの文学的・思想的特徴を知るためには、イクバールの初期詩作品の主要な発表場所であった雑誌『宝庫』やその他の雑誌などに掲載された、初期テキスト(初出時のテキストや初出時に近いテキスト)を調査する必要がある。しかし、従来の研究は、初期テキストの研究を確実に行っているとは言い難い状況にある。そこで入手済みの資料を用いて校合作業を行い、その研究成果として、雑誌『宝庫』創刊号に掲載された詩「ヒマラヤの山並み」とその後、詩集『鈴の音』に「ヒマラヤ」という題名で収録された同詩をそれぞれ翻訳し、発表した。 (2)19世紀後半から20世紀初頭にかけてのウルドゥー語文化圏の文学・思想状況の研究。初期イクバールに影響を与えたと考えられる文学者・思想家シブリー・ヌウマーニー(Shibli Nu'mani, 1857-1914)の文学観の研究を行うとともに、20世紀初頭の、初期イクバールの活動舞台であったラホールの文学・思想状況を知るために、雑誌『宝庫』に掲載された、イクバール以外の詩人たちのウルドゥー詩作品の文学的・思想的傾向の研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
イクバールの初期詩作品の読解作業は、ほぼ予定通りに進んでいるが、雑誌『宝庫』の初期バックナンバーやイクバールの詩が掲載された、『宝庫』以外の雑誌にはまだ未確認のものがあり、パキスタン、インドなどに出張し、現地図書館で初期テキスト(初出時のテキストや初出時に近いテキスト)の確認作業を行う計画であったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延のため、出張することができず、初期詩作品の初期テキストの確認・確定作業を完了することができなかった。また、初期イクバールに大きな思想的影響を及ぼしたと考えられるイギリス人東洋学者トーマス・アーノルド(Thomas Arnold, 1864-1930)が残した文書類を調査するため、イギリスに出張する予定であったが、これも上記の理由により、中止せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査が可能となれば、現地において、(1)雑誌『宝庫』やイクバールの初期詩作品が掲載された、『宝庫』以外の雑誌の調査、(2)雑誌『宝庫』の編集者アブドゥル・カーディル(Abdul Qadir, 1874-1950)やイギリス人東洋学者トーマス・アーノルド(Thomas Arnold, 1864-1930)など、初期イクバールに影響を与えたと考えられる人物に関する情報収集、(3)19世紀後半から20世紀初頭にかけてのウルドゥー語文化圏の文学・思想状況に関する資料収集を行う。 当面は、イクバールの初期詩作品の読解・翻訳を進めながら、入手済みの雑誌『宝庫』に掲載されたイクバールの詩のテキストと詩集『鈴の音』所収のテキストとの校合を行うとともに、雑誌『宝庫』に掲載された、イクバール以外の詩人たちのウルドゥー詩作品の文学的・思想的傾向の研究を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延により、パキスタン、インド、イギリスでの海外調査を行うことができず、また、現地で研究資料を購入することができなかったため、次年度使用額が生じた。 2021年度は、新型コロナウイルス感染症が収束した段階で、当初の予定通り、海外調査を行うとともに現地で研究資料を購入する。 海外調査が困難な場合には、入手済みの研究資料を用いて研究を行うとともに、共同研究や冊子体による研究成果発表の道を探ることとする。
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Research Products
(3 results)