2022 Fiscal Year Research-status Report
A study on the early poetical works of poet-thinker Muhammad Iqbal
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18K00504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松村 耕光 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (60157352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イクバール / ウルドゥー詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度においては、優れたウルドゥー語・ペルシア語詩人であり、南アジアの重要なイスラーム思想家の一人でもあったムハンマド・イクバール(Muhammad Iqbal, 1877-1938)の、インド・ナショナリズムや一元論的神秘思想の影響下にあったとされる、1905年から1908年にかけてのヨーロッパ留学以前の詩作品の文学的、思想的特徴を明らかにするため、以下のような研究を行った。 (1)イクバールは、初期の多くの詩をウルドゥー語雑誌『宝庫(Makhzan)』に発表しているが、第1ウルドゥー詩集『鈴の音(Bang-e Dara、1924年出版)』収録時に詩句の削除、改変、追加を行っている。従来のイクバール研究では雑誌『宝庫』に掲載された詩作品のテキストはほとんど考慮されていないので、雑誌『宝庫』のテキストと詩集『鈴の音』のテキストとの比較検討を行った。初期の代表作の一つである「苦しみの姿(Tasvir-e dard)」を雑誌『宝庫』のテキストに基づいて和訳し、注記を付して公表した。 (2)雑誌『宝庫』以外に発表されたイクバールの初期詩作品のテキストを入手するのは非常に困難であるが、幸い、初期の重要な詩作品「ムスリム共同体の嘆き(Faryad-e ummat)」の古いテキストが入手可能であったので、これに基づいて和訳し、注記を付して公表した。 (3)詩集に収録されなかった初期の詩を集めた拾遺詩集を検討し、初期詩の文学的、思想的特徴について研究を進めた。 (4)イクバール初期詩の文学的、思想的特徴を当時の文学、思想潮流の中で検討するため、雑誌『宝庫』に掲載された、イクバール以外の詩人の詩作品の読解を進めた。 (5)イクバールの文学・思想形成に大きな影響を与えたと考えられるインド内外の文学者や思想家についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
収集済みの資料に関しては、イクバールの初期詩作品の検討作業をほぼ予定通りに進めることができたが、新型コロナウイルス感染症蔓延のため、パキスタンやインド等に出張し、以下の資料を検討することができなかった。 (1)雑誌『宝庫』の未確認バックナンバー (2)『宝庫』以外の主要なウルドゥー語雑誌 (3)イクバールが詩を発表した、イスラーム擁護協会(Anjuman-e Himayat-e Islam)の年次大会の記録
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Strategy for Future Research Activity |
イクバールの初期詩作品の文学的、思想的特徴を明らかにするという研究目標は、収集済みの資料を用いて基本的に達成可能な段階に達しているので、2023年度においては、未確認資料の入手に努めるとともに、イクバールに影響を与えたと考えられる、インド内外の文学者、思想家に留意しつつ、イクバールと同時代のウルドゥー詩人の詩作品の読解作業を進め、イクバールの初期詩作品と比較し、後者の文学的、思想的特徴をさらに詳しく検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、パキスタン、インド等において現地調査を行うことができなかった。また、現地で研究資料(単行本、雑誌等)を購入することもできなかった。以上が次年度使用額が生じた原因である。 2023年度は、日本において収集可能な研究資料の購入に助成金を充てる予定である。
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Research Products
(2 results)