2018 Fiscal Year Research-status Report
百一夜物語におけるミソジニーに隠されたミサンドリー
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18K00515
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 人間文化学部, 教授 (20340466)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アラビアンナイト / 千一夜物語 / 枠物語 / イスラーム / 仏教 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に、『百一夜物語』アラビア語写本の研究に力を入れた。『百一夜物語』アラビア語写本は、これまで、国立フランス図書館に3つ、国立チュニジア図書館に2つ、アガ・ハーン美術館に1つ、そして個人所蔵として3つが確認されている。個人所蔵としての3つのうち、アルジェリア写本はかつての所有者によると、現在は不明となっている。今年度は、ライデン大学所蔵の写本について、ほかの写本との関係性を見るため主に収録話の順番に焦点をあてて調査を行い、以下のことを明らかにした。(1) この写本は80葉あり、夜毎に区切られている、(2) この写本は枠物語の途中から始まり、第64夜で終わっていることから不完全である、(3) 収録話は15ある、(4) この写本における収録話の順番がGaudefroy-Demonbynesが示した順とは異なる、(5) この写本における収録話の順番がアガ・ハーン美術館の写本、国立フランス図書館写本所蔵番号3662、アルジェリア写本(個人所蔵の1つ)に類似している、 (6) この写本における2、3の収録話はほかの写本に収録されていない、(7) この写本における2、3の収録話は国立チュニジア図書館の写本に収録されている、(8) この写本の前半においては収録話の順番が( (2) に記した)3つの写本と類似しているにもかかわらず、後半においては異なっている。この調査の成果を、国立台湾大学(台北)で2019年2月に開催された第2回イスラーム文明国際カンファレンスにおいて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
写本の研究は、コディコロジー関係以外は、予定通り進めることができ、研究成果の発表も海外で行うことができた。しかし、ミサンドリーに関する研究が『千一夜物語』関連では文献が非常に少ないため、資料があまり収集できていない。また、7、8つの写本と見比べながら行う写本の研究に予想より時間がかかったため、『百一夜物語』の枠物語と仏教物語との比較調査にも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
ライデン大学の『百一夜物語』写本研究については、写本の実見調査にくわえ、コディコロジー専門家の意見をとりいれたい。今年度進めてきた収録話の順番にくわえ、写字生、書体等の調査を引き続き行い、論文の執筆にとりかかりたい。『百一夜物語』枠物語におけるミサンドリー的要素については、文献がうまく見つけられなかったことから、まず『千一夜物語』関連のミソジニーに関する文献を渉猟し、そこからミサンドリー論につながるものを入手する。ミソジニー論とミサンドリー論の対比や議論を土台に、イスラーム文化と仏教文化という異なる文化的背景において、女の不義、男女関係の破綻、男の非道、男の自滅がどのように捉えられるのかを調査し、『百一夜物語』枠物語と研究対象となっている仏教物語との比較分析に役立てる。さらに、可能であれば、仏教物語における金の像のエピソードをギリシア神話などを基盤にした理論に基づき、男女関係の破綻と男の自滅との関連性を追求する。
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Causes of Carryover |
写本の実見による分析、写本のコディコロジー(写本に関する形態学的調査)専門家に協力をあおぐ目的で海外調査へでかける予定であったが、先方と日程の都合をあわせることができず、調査旅費を支出しなかった。またその調査に伴う物品購入や謝金も発生しなかったため。 2019年度は写本の実見による調査やコディコロジー専門家との意見交換のための海外調査を行う計画である。
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Research Products
(2 results)