2019 Fiscal Year Research-status Report
百一夜物語におけるミソジニーに隠されたミサンドリー
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18K00515
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
鷲見 朗子 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (20340466)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アラビアンナイト / 千一夜物語 / 枠物語 / イスラーム / 仏教 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は『百一夜物語』の8つの写本グループを分類するのに、収録話の順番についての調査を行い、3つの写本(マイナーグループ)が、おおむね共通している5つの写本(メイングループ)とは順番が異なることが解明された。さらに8つの写本の特性を明らかにするため、枠物語の内容の比較分析を行ったところ、マイナーグループのうち2つがメイングループおよびマイナーグループの残りの1つと異なることがわかった。またミソジニーとミサンドリー関連の主題を考察するため、枠物語に収録されている詩句について調査を行った。その結果、詩句に関しては、メイングループとマイナーグループに分けることができず、相違の割合が収録話の順番に比べて、より大きいことが明らかになった。これらのことを国立マレーシア大学で開催された国際学会で発表し、有益なフィードバックをもらうことができた。その学会を通じて、アラビア語写本を専門とする同大学のマレーシア人研究者と偶然、面談することができ、写本研究について新たな知見を得た。さらに、科研費代表者の英語とアラビア語による著書を国立マレーシア大学図書館に寄贈し、研究交流をはかった。 『百一夜物語』に含まれ、ミソジニーとミサンドリーに密接に関わる「七人の大臣とシンドバードの物語」について考察を始めた。関連図書を入手したことから、東洋と西洋に広く伝播した「七人の大臣」物語の写本のなかで、広本と小本の接点になりうるなど『百一夜物語』の同物語が重要な役割を果たすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
写本研究のコディコロジーについては、オランダを訪問し専門家に相談する予定をしていたが、その専門家が高齢で体調がすぐれないため会えないと言われ、実現できなかった。また令和2年3月末にドバイの研究機関においてアラビア語写本ワークショップが開催される予定であったが、新型コロナ感染拡大のため、取りやめとなり、参加がかなわず、写本調査の進め方の確定に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
世界的に新型コロナ感染拡大が収まったなら、海外におけるアラビア語写本ワークショップや学会に参加し、写本校訂のあり方について見識を深め、現在進めている『百一夜物語』の写本の校訂に関して方向性を定める。その校訂の一部を含めた論文執筆を行い、成果発表につなげる。『百一夜物語』写本は、国外にある図書館所蔵の写本ばかりなので、電子データだけでなく写本の実見が必要な場合は訪問し調査を進める。 またミサンドリーの主題に関しては、女の不実と男の残忍さ、そして男の愚かさの意義と役割について、『百一夜物語』の「枠物語」および「七人の大臣とシンドバードの物語」を中心に、仏教物語等、関連するほかの地域の物語と引き続き比較分析を行い、これも国内外の学会等で報告する。ミサンドリーの知見を拡げるため、文献をさらに収集することが求められるが、「七人の大臣とシンドバードの物語」や「七賢人物語」に関する論文や図書を読み込みながら情報を集めていく。
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Causes of Carryover |
国内外で予定されていた調査旅行やワークショップ参加が諸事情でとりやめになったため、その費用が不要になった。次年度に海外訪問が可能になれば、それに充当したい。
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Remarks |
鷲見朗子「もうひとつのアラビアンナイト 北アフリカの物語」京都府立図書館連続講座 2019
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Research Products
(1 results)