2019 Fiscal Year Research-status Report
Southern Literature in the U.S. and Immigrants: A Prospectus for Coexisting and Assimilating with Cultural Others
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18K00517
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
樋渡 真理子 福岡大学, 人文学部, 准教授 (00309882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サザンルネサンス以降のアメリカ南部文学 / 南部文学とアジア系移民表象 / 移民越境の歴史と同化 / ヘイトの歴史と異文化理解 / アジア系のディアスポラ / ベトナム移民とアメリカ南部 / ニュー・サザン・スタディーズ / ミシシッピデルタと移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、アメリカでもとりわけ保守的だと言われる南部における文学形式において、移民をはじめとする「文化的他者」である社会的・経済的弱者がどのように描かれてきたかについて考察し、アメリカ文化における移民越境の歴史と同化の可能性を探ることが目的である。本研究2年目においては、アメリカ南部におけるアフリカ系アメリカ人とその文化に関する表象について研究を行い、論考にまとめた(ただし、出版は2020年6月になるため、業績としては記していない)。南部の文化的他者として沈黙を強いられてきたアフリカ系アメリカ人のディアスポラとコレクティブメモリーについて考察することは南部における他者受容を考察する上で欠かせない視座である。また、ヴェトナム戦争後、アメリカ南部の家庭に引き取られたベトナム人の養子が描かれるモニーク・トルゥオンの『ビター・イン・ザ・マウス』において、1980年代以降のアメリカ南部における人種的寛容のプロセスとその限界についてまとめた。その原稿は国際学会に受理され、2月にテキサス州ダラスにて発表したほか、発表原稿はモノグラフとして掲載されることが決定している。covid-19により渡米して資料収集することは叶わなかったが、国際学会での発表と発表原稿が受理されたこと、世界中から集まった研究者との交流を通じて本研究の方向性と軌道修正すべき点などが見えてきたことは大きな収穫であった。 本年度の研究成果 1)「トニ・モリソンの『ホーム』における1950年代南部」について考察し、原稿を執筆した。ウィリアム・フォークナー協会編『フォークナー』第22号(2020年6月末発行予定)に掲載される予定である。 2)国際学会への応募原稿が受理され、アメリカテキサス州ダラスで個人発表を執り行った。 3)上記学会において発表した原稿は学会発行モノグラフにて出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月中旬から4月初頭にかけて資料収集のために渡米し、アメリカ南部研究者との交流の機会や図書館での研究を行う予定であったが、パンデミック発生という状況下において、海外渡航の全ての予定を中止せざるを得なくなった。5月に開催される予定の九州アメリカ文学会年次大会でシンポジウムのコーディネイター兼発表者として発表することが決まっていたため、研究2年目の後半部分はアメリカ南部における新しい文学の流れに関して研究を続けていた。しかし、コロナウイルス感染防止のため学会の開催が中止され、先に進むかに見えた研究が中断された。その後、発表する予定だった内容は、2021年10月開催予定のアメリカ文学会全国大会においてシンポジウムとして発表することが決まった。一旦中断されたかに見えた研究は、更に一年準備期間を与えられたことにより、研究の幅が広がっていくことが予想されるため、研究を深化させる機会と前向きに捉えたい。
当初の研究の予定よりは遅れ気味ではあるものの、アメリカ南部例外主義や南部エリートの言説、そしてアフリカ系アメリカ人の視点から読み直す南部、に関する理解に関しては大きな収穫のあった一年であった。アフリカ系アメリカ人による南部表象や、アジア系による南部表象や移民によるナラティブに関する小説や研究書が多く出版され、それらを漏れなく収集、要点を整理することにかなり時間がかかったため、今年の研究はやや遅れていると結論づける。研究を進めるに従って余剰の研究テーマがやジャンルが新たに見えてくるため、当初の予定よりも研究ペースは遅れているが、それは決して研究が前進していないというわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で研究の最終年になるため、これまでの成果をまとめるための準備を行う。
1)収集した資料の中から、時代別の移民や文化的他者に対するナラティブの要点を整理し、今回の研究でまとめられるもの、そして今後の研究の課題として引き続き研究するものとのテーマ別の資料整理を引き続き行う。 2)コロナウイルス感染防止対策のため延期となったシンポジウムの準備を進める。 3)世界的パンデミックが収束の方向に向かい次第、当初の予定通り、文献収集のためにアメリカ南部を中心に渡米する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大のため、3月に予定していたアメリカ南部における資料収集ができなくなったことにより、繰越額が残ることになった。コロナウイルスの状況が収束次第、渡米して研究を進めたいと考えている。万が一、それができない場合には研究に欠かせない資料類のうち、国内から発注できるものを中心に揃えていくために予算を計上する予定である。
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