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2018 Fiscal Year Research-status Report

認知言語学における「捉え方」概念と言語哲学における「意義」概念の統合に関する研究

Research Project

Project/Area Number 18K00551
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

酒井 智宏  早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (00396839)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords意義 / 意味 / 単称思想 / 捉え方 / 認知言語学
Outline of Annual Research Achievements

一見したところ強い記述主義をサポートするかのように見える言語現象を取りあげ、実際にはそこに個体に関する思想(単称思想)が含まれることを示した。具体的な議論は次のとおりである。記述主義はいわゆる単文のパズルによって強力にサポートされる。「スーパーマン = クラーク・ケントだ」と「スーパーマンはクラーク・ケントより多くの高いビルを飛び越える」を認めると、「スーパーマンはスーパーマンより多くの高いビルを飛び越える」が帰結するはずであるが、実際にはそのようなことはない。このパズルの有力な解決案として、「スーパーマンはクラーク・ケントより多くの高いビルを飛び越える」に登場する二つの固有名詞は個体ではなくアスペクトを指す(それゆえ個体レベルで同一だからと言って両者を入れ替えることはできない)とするものがある。個体レベルの同一性「スーパーマン = クラーク・ケント」を知らない話者でもこの文の真理条件を正しく理解できるという事実は、固有名詞が個体を経ることなく直接アスペクトを指すことができることを物語っている。これは世界が個体ではなく性質から成っているという強い記述主義の考え方と整合的である。しかしながら、この考え方は「スーパーマン = クラーク・ケント」を知っている話者はスーパーマンとクラーク・ケントを同一個体の異なるアスペクトとして捉えているのに対して、両者の同一性を知らない話者はそれらを異なる個体として捉えているという事実を見落としている。いずれの認識状態のもとでも、「スーパーマンはクラーク・ケントより多くの高いビルを飛び越える」という文には個体に関する思考(単称思想)が含まれている。このように、真理条件レベルを超えて事物の捉え方まで考慮に入れることで、「スーパーマン = クラーク・ケント」の認識価値もフレーゲ的意義(記述)に訴えることなく説明することが可能になる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

「研究実績の概要」に記したとおり、単文のパズルに関する考察により、「言語表現の形式が同じでも対象/事態の捉え方が異なりうる」というテーゼの妥当性を確認することができた。この成果を応用して、同一性言明の否定が非真理条件レベルで存在論の変化を伴うことを示すことを目的とする研究に着手した。「クラーク・ケントはスーパーマンではない」を受け入れると、クラーク・ケントとスーパーマンを二つのアスペクトとする単一の個体の存在は否定される。それにもかかわらず「スーパーマンはスーパーマンより多くの高いビルを飛び越える」という文の真理性は保持される。これは「ペガサスは存在しない」を受け入れることによって「ペガサスはブケパロスより多くの高いビルを飛び越える」の真理性が否定されるのと対照的である。こうしたことから、同一の言語形式の背後にある捉え方の違いという概念の有効性を示す作業が順調に進んでいると判断される。

Strategy for Future Research Activity

「言語表現の形式が同じでも対象/事態の捉え方が異なりうる」というテーゼの検証のため、文の事実確認的ないし記述的用法と行為遂行的用法の違いが、発話と世界の関係の捉え方の違いに由来するものであることを示す。オースティンは I name this ship the Queen Elizabethという文Sを発話することはすなわち命名という発語内行為を行うことにほかならず、この発話は真でも偽でもないと考えた。他方、Sには事実確認的用法もあり、その用法のもとでは、Sは通常の平叙文の発話と同じく真理値をもつ。行為遂行的用法と事実確認用法は、同一の発語行為に対応する一方、異なる発語内効力をもつ。Sの発話者は(狭義の)行為遂行的用法においては命名行為を、事実確認的用法においては主張行為を遂行する。行為遂行的発話はRecanati (2000)の言う没入的な捉え方に対応し、儀式を構成する象徴的行為の一つとして捉えられる。このとき、発話は当該の儀式によって規定される発語内効力をもつ。他方、主張的発話はRecanati (2000)の言う反省的な捉え方に対応し、儀式を外側から記述することを意図した行為として捉えられる。

  • Research Products

    (4 results)

All 2018 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (2 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results,  Invited: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Singular Thought in Non-Singular Propositions: A Cognitive Linguistic Perspective2018

    • Author(s)
      Tomohiro Sakai
    • Journal Title

      Tokyo University Linguistic Papers

      Volume: 40 Pages: 211-227

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] On Japanese Generic Names: Are They Part of the Language?2018

    • Author(s)
      Tomohiro Sakai
    • Organizer
      Namn i skrift/Names in Writing, Gothenburg University
    • Int'l Joint Research
  • [Presentation] 認知言語学中上級: メンタル・スペースとその周辺2018

    • Author(s)
      酒井 智宏
    • Organizer
      日本言語学会2018年度夏期講座
    • Invited
  • [Remarks] Tomohiro Sakai's Website

    • URL

      https://www.tomohirosakai.com

URL: 

Published: 2019-12-27  

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