2018 Fiscal Year Research-status Report
WH演算子の特性とその内的併合に関する統語論的研究
Project/Area Number |
18K00553
|
Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
北尾 泰幸 愛知大学, 法学部, 教授 (90454313)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | WH演算子 / 内的併合 / 関係節 / 長距離依存性 / 再述代名詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 30 年度は、日本語関係節の長距離依存性(long-distance dependencies)を軸に考察を行い、同分析を通して、日本語における WH 演算子の内的併合(Internal Merge)の仕組みについて分析した。日本語関係節は、表層の関係節主要部とそのθ位置が非局所的な関係である場合も文法的であることから、派生に演算子の内的併合が関わっていないと分析されることも多い。しかし、同関係節の長距離依存性を精査すると、再構築・連結性現象を見せないものの、弱交差現象等の統語現象を見せることから、演算子の内的併合が関与していることを理論的および経験的に明らかにした。また長距離依存性は、演算子の内的併合に加えて、音形を伴わない再述代名詞 pro の生起が関与していることも立証した。本分析については、Workshop on Long-distance Dependencies(2018年10月、ドイツ、フンボルト大学ベルリン)で発表した。 また、関係節の統語特性に関して、表層の関係節主要部とθ位置が局所的な関係にあるものについても引き続き研究を進め、平成 30 年度は左枝分かれ移動(left branch extraction)の分析を中心に行った。日本語は左枝分かれ移動を伴う要素の抜き出しは一般的に許されないことを明らかにし、関係節も例外ではないことをデータと共に立証した。同研究は、論文の形で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非項位置への WH 演算子の内的併合のうち、以前から研究を続けている関係節の研究にとどまってしまった部分はあるが、日本語関係節の長距離依存性と演算子移動、および派生における再述代名詞の生起を明らかにできたこと、加えて、応募が採択され、「長距離依存性(long-distance dependencies)」をテーマとする国際会議で発表できたことは、平成 30 年度は海外発表を予定していなかったことを考えても、研究が順調に進んでいる一つの証左としてよいと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成 31 年度は、比較構文・分裂文など、他の非項位置への WH 演算子の内的併合を含む統語現象について精査するとともに、ラベル付けアルゴリズム(Chomsky 2013, 2015, etc.)の下での WH 演算子の内的併合の統語的仕組みとその特性を明らかにできるよう、研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
消耗品に関する費用を若干節約することができたため。
|
Research Products
(2 results)