2022 Fiscal Year Research-status Report
統語論と談話・情報構造とのインターフェイス:問いとその答えの表現形式を巡って
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18K00570
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石原 由貴 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40242078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | speech act / verum / force of utterance |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に引き続き、質問に対して述語を繰り返す形で返答する場合に現れる、命題が真であることを強調するverum focusについて考察を行なった。55th Annual Meeting of the Societas Linguistica Europaeaにおいて、ドイツ語、コンチュコスケチュア語、バントゥー諸語、ポルトガル語などさまざまな言語のverumに関するワークショップHow to Mark the Truth: Cross-Linguistic Approach to Verumが開かれ、私も日本語に関する発表を行った。日本語では、真偽値をもつ平叙文に限らず、命令文や勧誘表現においても述語の繰り返しによる強調表現が現れることに着目し、verum focusを発話の力の強調のひとつの表れとして捉える可能性を提示した。すなわち、verum focusは平叙文における話者の発話の力である「断定」の強調であると考えられ、命令文や勧誘表現の背後にある発話の力もverumと同じように述語の繰り返しによって強調されうることを示した。これは、verumの解釈が文のmoodの強勢から得られるというLohnstein (2016)やKocher(2022)の仮説を日本語のデータを用いて支持するもので、当初考えられていたよりも広い観点からverumを捉え直す試みである。また、verum focusをもつ文が同時に程度の強調の解釈を許す場合があることから、Ishihara (2019)で提案した仕組みを拡張し、Speech Act headにある解釈不可能な素性が一致する解釈可能な素性の起こる位置によって、verum focusの解釈になるのか程度の強調の解釈になるのかが決まるという提案を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
verumに関するワークショップに参加し、通言語的に統語論、意味論、語用論、談話構造などの接点に関わる現象に対するさまざまなアプローチについて考えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年から2021年に行った文末に起こる「って」という補文標識の表す意味についての研究と、2021年から2022年に行った述語の繰り返しによる発話の力の強調という研究を統合して推し進め、補文標識「って」が驚き(mirativity)という発話の力を表す用法について考察し、学会発表等でフィードバックを得る予定である。
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Causes of Carryover |
ルーマニアのブカレストで開かれた55th Annual Meeting of the Societas Linguistica Europaeaにオンラインで参加したため、計上していた海外旅費を使わなかった。 次年度は対面で開催される国際学会に出席し、発表することを予定している。
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