2023 Fiscal Year Research-status Report
統語論と談話・情報構造とのインターフェイス:問いとその答えの表現形式を巡って
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18K00570
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石原 由貴 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40242078)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ディスコース / 補文標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、National and Kapodistrian University of Athensで開かれた56th Annual Meeting of the Societas Linguistica Europaeaにおいて"On the Mirative Use of Quotative Complementizers and Exclamatives in Japanese"というタイトルでポスター発表を行った。 Ishihara (2020)では引用を表す補文標識to/tteは文末で起こる時に驚き(mirative)の意味を持ちうることを示したが、本発表では、他にも補文標識to/(t)teがmirativeの意味を持つ文脈として、(1)「痛いの痛くないのって」のような程度の甚だしさを強調する慣用表現において、「信じられない」のような随意的に起こる述語の取る補文を表す標識として現れること、(2)「なんと/なんて大きな花だろう」のようなwh感嘆文のwh句が「言う」のような引用の動詞を随意的に含むことから、その補文を示す標識としてwh句内に現れること、(3)「花子が仕事を辞めたなんて」のような文形式の感嘆文の文末に、「信じられない」のような明示されない述語の取る補文を示す標識として現れること、を示した。それらに共通するのは、引用の機能を持つ補文標識が驚きを表すような述語の補文の一部として、あるいは驚きを表す感嘆文内で引用を表す補文標識として生起することによってmirativityを帯びてくるということである。これらの例は、そのような驚きを示す述語を持たない文末に生起するto/tteよりもmirativityとの結びつきが想起しやすく、文末のto/tteとmirativityをつなぐリンクとなっている可能性があることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナの影響で学会に参加しづらい時期があったため研究の進捗が少し遅れてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本研究課題の最終年度になるので、これまでの成果を発展させつつ取りまとめを行う予定である。特に、対話における補文標識の意味や語用論上の働きについて検討を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナのために研究期間中に予定していた旅費の使用が減り、次年度使用額が生じた。次年度に学会発表の旅費として使用したいと考えている。
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