2021 Fiscal Year Research-status Report
Translanguaging and contextualization in heritage language speakers' everyday interaction: A comparative study of Okinawan diaspora communities
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18K00577
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮平 勝行 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (10264467)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 沖縄ディアスポラ / 継承沖縄語 / コード切替 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は前年度提出した沖縄ディアスポラ共同体におけるスピーチ・コードに関する論文を,編集者からの質問と詳細なコメントに基づいて改題した上で,大幅な修正を加えて再提出した。スピーチ・コード理論の枠組みを改めて詳述した上で,沖縄ディアスポラ(在ハワイ,ロサンゼルス,カンポ・グランデ)の日常会話に現れる日本語と沖縄語の語彙借用,コード切り替え,言語横断などの現象とそのメタ語用論的意味と機能を会話のトランスクリプトに基づいて分析した。その結果,人名や土地名の沖縄語独自の発音,継承沖縄語の語彙や独自の言い回し(「なんくるないさ」「いちゃりばちょーでー」「ゆいまーる」「ゆんたく」など)が世代を通して受け継がれてきた沖縄ディアスポラ共同体の自己概念,成員間の社会的関係,そして相互行為の規範をメタ語用論的に表象していることを説いた。スピーチ・コード理論が提唱する共同体独自の「個」「社会」「文化固有の相互行為」が継承沖縄語を分析することによって明らかになった。 加えて本年度は,世界各地に散在する沖縄ディアスポラ共同体とそれらを結びつける人的交流ネットワークを支えるコミュニケーション行動に関するデータ収集と分析を行った。ウェブキャスト番組やYouTubeといった交流サイトで交わされるマルチモーダルなコミュニケーションを通して,伝統的な沖縄ディアスポラ共同体が「超多様性」の社会においてどのような変化を遂げているのか,継承沖縄語の使用に着目して研究を進めた。これまでの分析で明らかになりつつあるのは,地域に根ざした伝統的な共同体がネットを媒介とした越境的な共同体ネットワークに姿を変えるなかで,継承沖縄語が果たす役割は大きいということである。こうした研究の成果は,スペイン語に翻訳した上で,沖縄研究を特集した研究書の一章として出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は年間を通して新型コロナウイルス感染症による海外渡航が制限されたため,海外で実施する予定であったフィールドワークや聞き取り調査の代替として,世界各地から発信されるウェブキャスト番組やYouTubeなどの動画に収められた日常会話のデータを収集し分析を行った。代表的なデータ入手源としてハワイの沖縄県人会が発信しているYuntaku Live!やブラジルのうりずん会が発信しているYuntakukaiなどが挙げられる。いずれも「ゆんたく」という沖縄語で「おしゃべり」を表す語が題名にあることからも分かるように,英語やポルトガル語に沖縄語や日本語の語彙が混在した日常会話によるウェブキャスト番組である。Yuntaku Live!のエピソードは既に59回を数える。 ネットを介したこのような会話や視聴者のコメントを分析した上で,ネット上で緩やかに繋がる沖縄ディアスポラのコミユニティ意識とコミュニティ形成を支える言語リソースの機能についていくつかの発見があり,研究活動は一定の進捗をみた。しかしながら,海外での聞き取り調査が実施できなかったため全体的な研究計画を再考した結果,研究活動は当初の予定よりも遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したオンラインの日常会話データや新型コロナウイルスが蔓延する以前にハワイで収集したデータの分析を継続し,今後も海外渡航が困難な場合は海外の沖縄県人会代表者を対象にオンラインで聞き取り調査を行う予定である。自然会話と聞き取り調査のデータを横断的に分析することによって沖縄ディアスポラ共同体のスピーチコードを記述する。 また,今年10月には「第7回世界のウチナーンチュ大会」が開催されることになっており,世界中の沖縄県移民子弟が沖縄に集うこの祭典において,聞き取り調査やフォーカス・インタビューを行う予定である。これまでの調査で浮かび上がってきた疑問点や課題について直接参加者に問いかける良い機会である。祭典の一部はオンラインで催される予定であり,これらのイベントにも参加し考察を深めたい。 こうした計画に加えて継承沖縄語と継承日本語の比較考察も行いたい。これまでの調査で,海外の移民子弟は英語やポルトガル語の会話の中で,沖縄語と日本語の両方の語彙を借用したり,コード切り替えを行ったりすることが分かっている。両言語がどのように使い分けられているのか,会話データと聞き取り調査のメタ・メッセージ分析によって明らかにしたい。加えて,「世界のウチナーンチュ大会」には沖縄移民子弟ではないが熱烈な沖縄支持者も参加することから,沖縄語をアイデンティティ言語としない参加者が用いる沖縄語の語彙や表現に注目し,言語横断について考察する計画である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染予防のため海外渡航が実質的に禁止されるなか,沖縄ディアスポラにおける臨地調査が実施できなかったことで次年度への予算の繰越しが発生した。同時に,調査に協力していただいた方への謝金や研究データ処理のための人件費も執行の目処が立たず,次年度に繰り越すこととなった。未使用の予算は次年度行う予定の国内外での臨地調査及び学会発表の旅費などに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)