2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00582
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
大野 仁美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (70245273)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 談話文法 / コイサン / 情報構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、すでに収集ずみの談話資料をもとに以下(1)・(2)の文法項目の分析を進めた。 (1) 本研究が主な分析対象とする情報構造に関わる項目である「同定詞・コピュラ・焦点マーカー」が文を超えた範囲でどのように出現するかを観察した。その結果、当初の予想に反して同定詞とコピュラが共起する例と、焦点マーカーが既出のものとの同定のために使用されていると解釈できる例が複数観察された。前者は、主格の名詞+同定詞(「Xダ」)がコピュラに後続されるもので、それよりさらに先行する節に理由を付け足しているように解釈できるものである。これは、日本語における「Xダ」に対して「Xナノダ」がもつ意味・機能に近いと考えられるが、それとグイ語における同定・コピュラという機能がどう関連しあっているのか、あるいはこれまで想定していた同定・コピュラという機能を再考しなければいけないのかは現段階では理解できていない。 (2) グイ語に複数存在する伝達動詞(代表的なものはmimicのための動詞で自動詞、それ以外は他動詞)とそれがとる項を分析し、グイ語において可能な補文構造について考察を進めた。また補文標識がツワナ語から借用され、それが話者によっては、破格的に広範囲で用いられることを含め、補文をとることを文法化しつつあると解釈できるグラデーションが見られることを新規に発見した。 上記(1)・(2)の現象を正確にとらえ分析するために、話者との面接調査と、より多くの話者および年代を遡ったデータを用いた観察と検証が必要である。データに関しては、今年度も、分析対象とするELANを用いたデータベースの拡充を行った。一方で、現地調査が実施できないので、必要な項目を含むかどうか等の確認には過去に蓄積された音声や文法のトランスクリプションが不十分なデータも限界を認識した上で利用を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID19の状況が前年と変わらず、今年度も予定していた現地調査を実施できなかった。そのため、追加資料の収集(ガナ語・ツィラ語)や、すでに収集ずみのデータのトランスクリプションの再チェック、さらに新規に見つかった現象について面接調査を行い詳細を確認することができないのが最大の理由である。なおインターネットを用いた現地との通信環境は構築できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた海外調査は、渡航が許可され感染の心配が解消される状況になれば来年度実施する。しかしながら楽観はできないので、本研究の研究期間に実施した調査によって得た資料に加え、過去に収集したグイ語資料も合わせて、より多くの話者による、より古い資料まで対象を拡大する。当初期待していたガナ語・ツィラ語の分析は、残念ながら本研究の対象からは外し、将来の課題とせざるを得ない。
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Causes of Carryover |
予定していた海外調査が実施できていないため計上していた予算を執行していない。この予算は、調査地への渡航が許可され、感染の心配がない状況になった場合は、現地調査を実施するために使用する。そうでない場合およびそれまでの期間は、データベース作成のための人件費として使用する。
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