2018 Fiscal Year Research-status Report
言語理解における処理負荷の要因と抑制機能の役割の解明
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18K00587
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
新井 学 成城大学, 経済学部, 准教授 (20568860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬塚 れい子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (00392126)
大石 衡聴 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40469896)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抑制機能 / 眼球運動測定 / 文処理 / 予測 / 実行機能 / 読み / 言語理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は眼球運動測定実験の準備および遂行を行った。この調査により、文処理研究において非常に影響力の強いSurprisal theoryなどの、次の情報の予想確率と反比例して処理困難が起こると想定している文処理モデルの予測と合致しない興味深い結果が得られた。具体的には「赤ちゃんが高価なワインを飲んでいた大女優に静かに微笑んだ」のような一時的に構造的曖昧な文において、間違った初分析の意味的な整合性が低い(赤ちゃんはワインを飲めない)文では、「青年実業家が高価なワインを飲んでいた大女優に静かに微笑んだ」という初分析も整合性が高いガーデンパス文と比べて早い段階の処理困難を反映する指標において差が出なかった。しかしsecond pass時間などの読み返しを含む遅い段階の処理を反映する指標において、初分析の整合性が低い文の方が有意に時間が短く、より競合が少ない方が処理負荷が少ないというcompetition modelの予測と合致する結果が得られた。しかし、重要なことに「青年実業家が高価なワインを歩いていた大女優に静かに手渡した」のような初分析が意味的に不可能な文では、後の関係節が現れたあとの処理を楽にするどころか、初分析を反映するfirst passなどの早い指標で非常に大きな処理困難が観測され、さらに遅い指標においても同じように処理困難が確認された。これはcompetition modelとの予測とは矛盾すると考えられ、この結果によって文理解における過度な処理負荷は予測の実行、文構造の再分析処理自体に影響を与える可能性があるという新しい知見が得られた。 この研究の成果は国内学会(口頭発表)と国際学会(ポスター発表)にて発表された。この研究成果をもって計画通り次に脳波実験、子供を対象とした実験に取り組むことができ、昨年度は各実験の共同研究者(大石氏、馬塚氏)とそれぞれ一度研究打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記した通り、研究は概ね当初の申請書の内容に沿って進められており、予想以上に興味深く、明確な研究結果が得られた。学会発表における反応も良く、次のステージに計画を進めるための十分な土台を築けたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度における主な課題は、子供を対象とした実験の準備と遂行、および成人を対象とした脳波実験の準備と遂行である。前者は本年度夏(8月)に遂行予定であり、現在実験文や絵刺激等を作成し準備を行っている。後者は秋学期中(11月~12月)に遂行予定であり、現在実験文を準備している。
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Causes of Carryover |
追加実験を行う必要がなく、実験補助者の謝金が当初見積もりよりも少なく抑えられたため。繰り越し分は主に次年度に遂行する実験の補助者への謝金に使用する予定である。
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