2018 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical linguistics and linguistic phenomena related with Point of View
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18K00599
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
西垣内 泰介 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (40164545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郡司 隆男 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 教授 (10158892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ロゴフォリシティ / エンパシー / 「自分」 / 指定文 / 潜伏疑問 |
Outline of Annual Research Achievements |
「指定文」と「潜伏疑問」の統語構造と論理構造の分析を進め,その中で「自分」の解釈など「視点」に関わる要因が関与している現象についての分析を進めた。これらの構文に関わる省略現象の分析の中で,ロゴフォリックな要素の有無が関与することがあることを示した。 「理由」と「原因」-- 「理由」を主要部とする連体修飾構造では「証拠性」(evidentiality)の文脈が生じ,「自分」のロゴフォリックな使用があること,それに対し「原因」を主要部とする連体修飾構造ではそのような文脈が生じないという現象について考察した。また,関与する構文の中で観察される「阻止効果」などについて考察した。 この内容は10月にStuttgartで行われたWorkshop “Logophoricity and Perspectivization in Wackershofen”で招待発表を行い,多くのコメントを頂いた。このワークショップでは欧米の最先端の研究者多数と研究交流を持つことができ,ロゴフォリシティと自由間接話法を体系的に区別する弁別特徴など,新たな研究の方向を示唆するものを得ることができた。 また,「XをYに」という形式の付加節の統語構造の考察において,「構造的連結性」を示す特性に「視点」の現象が関与することを示した。また,この考察の中で「時」の解釈が名詞の意味を限定するという現象が存在することがわかり,新たな考察の方向性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な構文に見られる「自分」や主観性を表す言語表現のふるまいに関して「視点」に関わる統語範疇(「視点」投射)が関与していることを示すことが本研究の一次的な目的であり,これまで「指定文」「潜伏疑問」「XをYに」構文などに関連して,それぞれまとまった業績をあげている。 「理由」「原因」の対比については当初の計画に含まれていたが,具体的な成果が得られたと考えている。 2018年度は6月にチェコ共和国の Olinco 2018 で発表, 10月にStuttgartで行われたWorkshop “Logophoricity and Perspectivization in Wackershofen”で招待発表を行い,多くのコメントを頂いた。これらの機会で欧米の最先端の研究者多数と研究交流を持つことができ,今後の研究の方向についても多くのヒントを与えられた。 「XをYに」構文は研究当初計画していなかったが,これに関連して構造的連結性の中で視点現象が関与すること,「時」の解釈が名詞の意味を限定する など,新たな知見を得ることができ,今後の研究の方向への指針となった。
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Strategy for Future Research Activity |
「阻止効果」について,Nishigauchi (2014) に対する反応が中国語,韓国語に関する研究の中で出ているので,今年度以降の研究の中で中国語,韓国語に力点を置いた「阻止効果」の研究を進める。 Nishigauchi (2014) の考え方では,ロゴフォリシティ,de se が関与しない「自分」の用法が日本語にはあり,そのような場合にのみ「阻止効果」が起こると主張しているが,最近の研究では中国などでもロゴフォリシティ,de se が関与しないケースがあると観察されている。本年度以降の研究で中国語などにおける再帰表現の分布,生起条件について観察を進めていく。 構文としては,「指定文」「潜伏疑問」の他,「量関係節」の性質についての考察を進めて行く。「量関係節」に関連して,比較構文の統語構造と意味的側面について独自の分析を展開していく。比較構文の統語構造には「量関係節」の構造が含まれているという方向の分析となる。 「指定文」について,西垣内 (2016, 『言語研究』)に対する反論論文が公刊されており,それに対する返答の論文を書くことも本年度の課題のひとつである。
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Causes of Carryover |
図書の購入で計画通り買えなかったものがあった。次年度にこれらを購入する予定。
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Research Products
(9 results)