2021 Fiscal Year Research-status Report
A constructional approach to adverbial modification of adjectives in Japanese: the productive network model with creative instances.
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18K00604
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
井本 亮 福島大学, 経済経営学類, 教授 (20361280)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情態修飾 / 連用修飾 / 形容詞 / 構文ネットワーク / 感情形容詞 / 主観性 / モノの存在のサマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は〈形容詞連用形+動詞句〉に生じる「一成分・多解釈」の現象と構成過程を構文ネットワークモデルの枠組みで記述することを目的とする。令和3年度の研究成果として以下を発表した:[1]井本亮(2021)「感情形容詞の連用修飾:主体性を導く構文の機能」(天野みどり・早瀬尚子(編)『構文と主観性』くろしお出版)・[2]「「アップルパイにリンゴが大きく入っている」:モノの存在のサマを表す形容詞連用修飾」(日本語文法学会第22回大会研究発表) [1]では、感情形容詞による情態修飾の事例に連用形形容詞詳述指定構文のネットワークを適用し、「話者読み」の成立を支える認知的基盤・構文的機能を考察した。すなわち、連用形形容詞が感情形容詞の場合には事態中に顕在的な詳述指定対象がないが、事態把握の様式である【主観化=事態の主観的把握】を導入することによって感情形容詞の詳述指定対象を見出すことで文法的な詳述指定が成立する。この分析によって、当該事例が有標的であることと文法的に成立することが自然に説明される。 [2]では、表題の事例のような非典型的な形容詞連用修飾の事例の分析を通して、当該事例の成立には動詞述語文のアスペクチュアリティ・エビデンシャリティ・存在表現に関わる文法的特性に密接な関連性があることを指摘した。この報告は成立困難とされてきた形容詞連用形によるモノの存在のサマを表す連用修飾関係が存在することを示し、項名詞句のモノのサマを表す形容詞連用修飾について〈結果/様態〉〈述部/副詞〉〈状態変化/動作〉といった二分法で捉えるのは不十分であることについて問題提起するものである。その後の分析によって、出現するコンテクストの偏り、動作主の抑制、眼前の存在様態の描写、テイル形による観察の含意など、関連構文との類似性が見出されている。さらなる分析と研究成果公表は次年度の研究計画に盛り込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今般の新型コロナウイルス感染症拡大による影響により、研究発表の時機が遅れたことから当初計画通りに進まない面があり、研究成果の公開時期はやや遅れていると言わざるを得ない。 しかし、その一方で、令和3年度の研究成果から新たに大きな研究課題が見出され、形容詞連用修飾の成立と動詞述語文のアスペクチュアリティ・エビデンシャリティ・存在表現の関与という新規性の高い研究に進展できる見通しが立った。このために事業期間を延長し、この研究の実施と成果発表を行うことにした。これによって形容詞連用修飾研究の視座はこれまでになく拡大されることになる。このように、研究計画そのものは当初予期していなかった期間延長を行うことになったが、本研究の理論的枠組みに基づいた大規模コーパスの分析によって新規性の高い研究課題が継続して見出され、次年度の研究計画に盛り込むことができるようになっている。このことに鑑みて、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)「シャツの背中に企業ロゴが大きく入っている」のような、モノの存在のサマを表す形容詞連用修飾関係とテイルのアスペクチュアリティ・エビデンシャリティ・存在表現の関与、動作主の抑制と状態の観察・描写など、標準的な動詞語彙論的分析の射程外にある項名詞句を修飾限定する形容詞連用修飾について、本研究の視座と分析アプローチを用いて分析を進める。この研究課題については、今年度の関連学会での発表、論文投稿を進める。この研究は連用修飾研究と動詞述語文研究双方の分野横断的な研究の視座を展開することに資する。 2)これまでの研究成果の総括として、形容詞連用修飾関係の一成分多解釈の様相を一覧できる研究成果公開の方法として、ウェブサイトを開設した。今年度は分析資料などその公開内容を充実させていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から各学会の開催形態の変更があり、旅費の支出がなくなったことがある。一方、研究そのものには予期していなかった進捗があり、当初計画されていた研究計画からのさらなる進展が見通せたため、研究計画を見直し、研究事業を再度1年延長することになった。このことから、次年度の研究計画に必要な直接経費を確保しておくことにしたためである。 次年度は、新型コロナウイルス感染状況を注視しつつ、学会参加および研究打ち合わせ旅費、研究成果の公表(論文投稿、口頭発表、Webサイト更新)のための英文校閲費用、必要な研究関連図書、データ分析のためのコンピュータおよび周辺機器の購入に使用する。
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Remarks |
令和3年度に研究計画に従い、研究成果公開のためのウェブサイトを開設した。
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Research Products
(4 results)
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[Book] 構文と主観性2021
Author(s)
天野みどり、早瀬尚子
Total Pages
296
Publisher
くろしお出版
ISBN
978-4-87424-877-5
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