2019 Fiscal Year Research-status Report
中世末期から近世初期の常用的漢字と常用的和訓についての横断的研究
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18K00608
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
白井 純 広島大学, 文学研究科, 准教授 (20312324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢字 / 和訓 / キリシタン版 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度にブラジル・リオデジャネイロ国立図書館で研究代表者が新たに発見したリオ本『日葡辞書』の複製本刊行に注力し、出版に向けた交渉のため2019年5月に3度目となるブラジル渡航を実施して、原本の詳細な調査を行った。 複製本には現在の研究動向をふまえ、リオ本の特徴について研究代表者が概要を解説し、全文英訳を行って研究成果の国際的理解と共有がなされるよう工夫した。更に、ボードレー本、エボラ本、パリ本に加えて写真版が残るマニラ本と対校した画像付きの校異一覧表を付して、2020年3月に刊行した。2月にはリオデジャネイロ国立図書館財団理事長、同館長、外国人研究者を招いた国際シンポジウムに参加し、同書の概要を紹介した。 中世日本語の漢字と和訓の関係について、寛永年間に出版された『脩華嚴奧旨妄盡還源觀』活字本二種および整版の訓読方針を、キリシタン版『落葉集』掲載の定訓(常用和訓のうち最も優先される和訓)と比較して、定訓の存在を前提とする付訓状況であることを確認し、「『脩華嚴奧旨妄盡還源觀』の刊行―印刷方法と訓読方針の関係について―」(高山寺典籍文書綜合調査団編『高山寺経蔵の形成と伝承』汲古書院、2020年3月刊行)として発表した。 キリシタン版『落葉集』の漢字と和訓の関係を整理し、キリシタン版のテキストでの漢字表記の実態と比較して定訓の枠組みの再検討を行い、2020年5月の日本語学会で発表する準備を進めていたが、コロナウイルスの拡大によって学会が秋に延期となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
『日葡辞書』はローマ字表記された定訓により漢字表記と語義の理解を促す注記を持つ点で、中世日本語の漢字と和訓の常用性の実態を理解するうえで不可欠な文献であるが、それだけでなく、日本語史研究うえで第一級の文献であることは間違いない。 研究代表者が新たに発見したリオ本『日葡辞書』の複製本刊行により、既刊の『日葡辞書』複製本と比較したより詳細な分析が可能になったこと、南米で初めてキリシタン版が発見されたことにより、世界各地にまだ知られていないキリシタン版が残されている可能性が出てきたことには、大きな学術的意義を認めてよいと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
中世日本語の漢字と和訓の常用性を象徴する定訓について、辞書と文献の用例を比較し、キリシタン版と日本側文献の双方を含めてより詳細な実態を把握することで、従来の定訓の定義を枠組みとして改訂し、研究成果として公表する準備を進めている。 コロナウイルスのため順延された日本語学会での発表の他、9月にブラジル・ブラジリアで開催予定の国際学会での発表を予定している。
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Research Products
(8 results)