2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00609
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
沖 裕子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (30214034)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 談話論 / 日韓対照談話論 / 依頼談話 / ていねいさの意識 / 省略 / 待遇表現 / 絶対敬語と相対敬語 / 長野県北信方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的を大別すると、次の4点になる。①対照談話論という新たな領域における方法論の開拓、②日本語、韓国語、中国語の談話を対照させることによって、ソトの観点から日本語談話の特徴を記述すること、③日本語の方言談話を対照させる方法論を開拓し、ウチの視点から日本語談話の特徴を記述すること、④ソトの視点とウチの視点を交差させることによって、発想と表現の点から談話論の枠組みを整備し、日本語談話の記述を行うこと。これにもとづき、本年度は、次のような成果を得た。 第1に、昨年度に分析結果を発表した、談話内省法という新しい談話研究方法の妥当性を、約700人を対象とした日韓国際調査結果から検証しえた。国際チームを組んで行う内省的談話分析による結果と同様の調査結果を計量的調査で得ることができたことで、方法論的妥当性を主張することができる。(目的①に関する成果) 第2に、計量的方法で、日韓の依頼談話意識の異同を記述することができた。χ二乗検定の結果、社会文化においては、つきあいの範囲は似ているが、親しい友達との交流実態が大きく異なっており、韓国のほうが連絡頻度が高いことが明らかになった。また、ていねいさの意識は日韓で大きく異なり、「はっきり言うことが丁寧だ」と感じる人は、日本約5割、韓国9割以上であった。社会文化、意識態度、談話構造、談話内容の4層について、日韓の談話的異同を計量的に記述することができた。(目的②に関する成果) 第3に、絶対敬語地域に属する長野県北信方言の待遇表現談話の記述を再検討し、関西方言の絶対敬語とは運用システムに異なりがあることを指摘した。(目的③に関する成果) 第4に、省略現象から日韓談話のしくみを分析考察し、日韓対照談話論というソトの視点を導入することによって日本語談話の省略を考察する新たな視点を見出し、記述した。(目的④に関する成果)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設定した4つの目的について、4点の成果を得ることができたばかりではなく、総合的に分析考察を進めることができた。この点では、当初の計画以上に進展しているといってよい。しかし、今般の新型コロナウィルスの感染拡大によって渡航制限が行われたため、対面で予定していた国際会議を招聘することができず、対面での研究打ち合わせを次年度送りとせざるをえなかったことは心残りである。メール審議では尽くせない点を残すため、対面の打ち合わせによる成果の深化はぜひとも必要である。不可抗力であるとはいえ、この点は、次年度送りにした。以上を総合して、進捗状況を記した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果をふまえ、今後は次の研究を推進する。 まず、継続課題として日中対照国際調査結果の分析を行うこと。そののち、日韓対照国際調査結果との総合的分析に進みたい。これにより、対照談話論の方法論的考察とともに、計量的記述の全容が見えてくると思われる。 次に、待遇表現の面から、日本国内の地域差の研究を、さらに進めていく。これにより、相対敬語と絶対敬語の地域を有する日本語談話と、発達した文法的待遇表現を絶対敬語によって運用する韓国語談話と、文法的待遇表現が簡素な中国語談話を対照させ、社会文化、意識態度、談話構造、談話表現の4層の同時結節モデルに立脚した記述を総合的に進める方法を模索する予定である。 また、努力目標として、これまで行ってきた国際共同研究の成果を俯瞰する記述を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる感染症の世界的流行のために渡航制限が行われ、予定していた国際会議に関する招聘が行えなかったため、それに関係した予算使用ができなかった。次年度は、渡航の回復状況をみて、延期した国際会議と研究打ち合わせ、および発表を行う予定である。
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Research Products
(9 results)