2020 Fiscal Year Research-status Report
近現代日本語「基本語彙」史の記述に向けた新聞・和語動詞の「叙述語」化の研究
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18K00612
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
金 愛蘭 日本大学, 文理学部, 准教授 (90466227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正彦 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10159676)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 語彙・意味 / 和語 / 基本語化 / 叙述語 / 外来語 / コーパス / 語彙史 / 新聞 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語の書きことばの基本語彙については,近代以降のマクロな変化の動向は明らかにされているものの,それを担った個別の語の具体的な出入り,とりわけ個々の語が新たに基本語彙の仲間入りをする「基本語化」の様相はほとんど解明できていない。本研究では,基本語彙の中でも文章の叙述方法に関連して用いられる「叙述語」の変化に注目し,近現代の書きことばの「基本語彙」史のなかで,どのような語が叙述語として基本語化したのか,また,そうした基本語化(叙述語化)をもたらした要因は何かという問いを設定したうえで,とりわけ現代(20世紀半ば以降)の新聞における和語動詞の叙述語化に焦点を当て,どのような和語動詞がどのように叙述語化したのかを明らかにすることを目標としている。 本研究では,この目標達成のために,次のようなことを行う。①研究代表者が先に構築した「通時的新聞コーパス」を増補してさらに大規模なデータを作成する。②そこから,独自に開発した統計手法を使って,叙述語化した可能性のある和語動詞を抜き出す。③それら和語動詞が実際に用いられている文脈付きの用例データベースを作成する。④それをもとに各和語動詞の叙述語化の過程を明らかにすることを計画している。 本年度は,昨年度までに作成した①の「通時的新聞コーパス」の増補改訂,②および③の用例データベース作成の作業を続けるとともに,④について試行的な検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のような研究計画のもと,現在まで次のことを行った。①「通時的新聞コーパス」の増補については,データ量の小さい1950年・1960年について,それぞれ約220万字・約80万字分のデータを追加して約300万字とすることを計画していたが,予算額縮小と入力単価の高騰により,1960年分の増補は断念し,1950年を200万字に増補する作業を,昨年度に続き行い,作業を完了した。その結果,各年のデータ量がすべて200万字以上となり,統計的分析の精度を大きく向上させることが可能となった。 ②と③については,研究分担者の石井が,独自に開発した「対数化特化係数散布度」を用いて,叙述語化した可能性のある和語動詞を抜き出し,それら和語動詞が実際に用いられている文脈付きの用例データベースの作成を進めている。 ④「和語動詞の叙述語化の記述」については,「話す,言う,述べる,語る」等の「談話引用動詞」について論文を発表したほか,「示す,発表する」「考える,思う」等の,まとまった〈内容〉を〈表示・表明する〉〈思考する〉ことを表す動詞や,「(勧告を)出す,(措置を)取る,(会議を)開く,(指摘を)受ける,(疑いを)持つ,(反発が)続く,(影響が)出る,(交渉に)入る」等の,機能動詞的に働いて新聞の叙述を組み立てる動詞に注目して,それぞれの叙述語化の過程の記述と分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
増補改訂作業が完了した「通時的新聞コーパス」を本格的に利活用して,②叙述語化した可能性のある和語動詞の抽出,③抽出した和語動詞の文脈付き用例データベースの作成,④抽出した和語動詞の叙述語化の記述と分析を,計画通りに行う予定である。 なお,次年度は最終年度であるため,これまでの研究成果を整理し,その結果を関連学界の学会や研究会等で報告を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
年度中に研究成果発表・資料収集のための旅費等を計上していたが,新型コロナウィルス感染症拡大により出張ができなくなる等,計画通りの予算執行ができなくなったため。 次年度における繰越額の使途については,当初の計画どおりに行う予定である。
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Research Products
(5 results)