2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00616
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
勝又 隆 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60587640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 係り結び / ソ / モノナリ文 / 名詞述語文 / 「連体形+名詞+ナリ」文 / 焦点 / 形式名詞 / 連体形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代日本語において述部に連体形や名詞が含まれる文(名詞性述語文)について、それぞれの構文的特徴や文意味・文機能等の観点からその名詞的性質について分析し、古代語の文終止体系におけるこれらの構文の位置づけを明らかにすることを目的とする。平成31(令和元)年度における主な研究成果は以下の3点である。 1 『万葉集』におけるソ(ゾ)の焦点範囲について(口頭発表、研究会「係り結び 関連現象 の通言語的 研究 に向けて 」、大阪大学、2019年12月14日(土)) 2 上代におけるモノナリ文の用法と構造(論文、『坂口至教授退職記念 日本語論集』創想社、2020年3月) 1は、ソの係り結び構文について、コソと比べつつ、ソの焦点機能と焦点範囲について整理したものである。ソの焦点機能については、新情報の提示が大半で、対比用法は全体の5%程度に過ぎず、対比が70%以上見られるコソと対照的な分布であることを示した。また、焦点範囲については承接語だけでなく述語を含むとみられる例が多いこと、またソの出現位置について、全体的には述語に近い位置によく現れるが、主題ハが現れる際はハの直後には従属節を除けば、―ソ句が現れることを示した。 2は、上代のモノナリ文における「〈用法〉と〈モノに上接する要素〉の関係」を「連体形+名詞+ナリ」文の場合と比べることで、モノナリ文の構文的特徴のうち、名詞述語文の構文構造に由来するものと、モノナリ文独自の特徴と言えるものとを明らかにしたものである。本稿では、上代のモノナリ文でケリやリが上接するのはモノが実質名詞として用いられている場合に限られることから、モノナリ文は〈一般的傾向〉を述べる構文として時間的限定性のない事態を言語化する点にその特徴があり、反語以外の疑問表現に用いられない点や上接語の分布傾向の一部は、「連体形+名詞+ナリ」文と共通する特徴であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果の1は勝又(2009)で示した語順の傾向を発展させ、琉球語等の他言語との対照を視野に行った整理・調査である。ソによる係り結び構文の焦点機能や出現位置に関する記述が一段階前進したことで、今後コソ等の他の係り結び構文や、中古語における調査などへと展開させる基礎となることが見込まれる。 成果の2は、名詞述語文の形式を持つモノナリ文の、名詞述語文としての性質が、単に述語が名詞であることによって生じているのではなく、「連体形+名詞」という構文構造にあることを示すことができた点で、大きな進展であったと言える。 また、上記の成果の他に、上代のミ語法についても研究を進めることができた。成果として刊行されるのは次年度であるため、今年度の成果には含めていないが、これはミ語法にもわずかながら「名詞性」は認められること、また名詞述語が含まれるコトニテやコトナレバ、モノナレバ等との比較も視野に入れたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
上代のソとコソの係り結び構文について、平成30年度の成果と今年度の成果を合わせ、さらにカ・ヤ・ナモについても調査・考察を進めることで、焦点範囲(上接語だけを取り立てるのか、述語まで含めて示すのか)や焦点機能(新情報の提示なのか、対比なのか、疑問や疑問応答なのか)について各係り結び構文の機能について整理を進める。 中古の「連体形+ゾ」文について係り結び構文や「連体形+ナリ」文といった類似の用法を持つ構文との違いを明確にするため、用法の分布や談話・文章構成上の出現位置における特徴などについて記述する。 従属節に見られる「名詞性」をどのように判定するかについて検討するため、原因理由節や条件節などにおいて名詞が述語となる場合の構文的特徴について調査を進める。また、その一方で上代のミ語法や、動詞述語、形容詞述語による原因理由節や条件節についても調査を進めることで、名詞が述語となる場合の特徴と従属節一般に見られる特徴とをより分けていく。 助詞が主節述語・従属節述語となるように見える場合について、名詞述語の場合との共通点・相違点について調査と考察を進めることで「名詞性」という本研究の尺度の精緻化を進める。
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Causes of Carryover |
文献複写の機会が想定よりも少なかったため、若干の残額が生じた。次年度の文献複写費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)