2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00616
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
勝又 隆 学習院大学, 文学部, 教授 (60587640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 係り結び / 名詞述語文 / 文章 / 談話 / ゾ / ナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、上代のゾ・コソによる係り結び構文がどのような特徴を持つ構文であるのかについて、焦点範囲や承接語句の観点から整理した。また、中古散文におけるゾとナムの係り結びが、文章・談話構成上、どのような役割を担っているのかについて調査・考察し、調査を終えた資料の範囲では、ゾが既出の話題に対して情報を補足するだけで、話題そのものは転換しないのに対し、ナムの場合は情報を補足する点は共通しつつも、ナムを起点に話題が転換・展開するという特徴を見出した。また、文章・談話構成という観点を、上代の韻文資料においても援用することで、上代のゾによる係り結びの機能も、その場における話題に関して説明を述べる「AハBダ」型の名詞述語文的な情報構造を持つものとして、先行研究の指摘と矛盾無く理解できることを指摘した。 口頭発表「名詞述語文との関わりからみた古代日本語の係り結び」(学習院大学国語国文学会、2021年11月)において、上記成果の全体を指摘し、論文「『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて」(『福岡教育大学国語科研究論集』63号、2022年3月)において『竹取物語』を対象に中古散文の地の文の文章構成上の働きについて、上記のゾとナムの違いを指摘した。係り結びの文章・談話構成上の働きに関する調査は『竹取物語』だけでなく、『落窪物語』や『源氏物語』等、他の散文資料を対象に、コソや会話文も含めて進めており、上代の韻文への援用も含め、上記口頭発表においてその成果の一部を紹介している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
談話構成上の係り結び構文の役割については、令和3年度に主に地の文の文章構成に着目することで考察を深め、方向性を定めることができた。引き続き調査対象となる資料を増やし、「連体形+ゾ」文や連体ナリ文、モノゾ文、モノナリ文などとの相違点を示しつつ、会話文についても考察を広げることで、よりその談話構成上の位置づけを明確に示せるものと考えられる。 一方で、文章構成に関する調査に想定よりも時間がかかったため、係り結び構文の焦点範囲に関する考察や、「名詞性述語」に関する整理、主節と従属節の違いについては次年度の課題として計画し直すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
中古のゾ・ナム・コソの係り結びと「連体形+ゾ」文、連体ナリ文、モノゾ文、モノナリ分について、文章・談話における出現位置について調査し、整理することで各構文の談話構成上の役割を明らかにする。 中古の係り結び構文について、ゾ・ナム・コソを中心に、焦点範囲(上接語だけを取り立てるのか、述語まで含めて示すのか)や焦点機能(新情報の提示なのか、対比なのか、疑問応答なのか等)について各係り結び構文の機能について整理する。 上代及び中古の係り結び構文や形式名詞述語文と、名詞述語文・動詞述語文・形容詞述語文との共通点と相違点について整理し、「名詞性述語文」の位置づけを示す。 主節における「名詞性述語文」の特性が、従属節において形式名詞や連体形接続の接続助詞が関わる場合と、どの程度共通し、どのような点が異なるかを分析することで、主節と従属節それぞれの特性を整理し、「名詞性」という概念自体について精査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症流行の影響で、当初予定した出張がすべてキャンセルかZoom等を利用したWeb開催となったため、旅費が生じなかったために、令和2年度からの繰越分がほぼ使用されないままとなった。 次年度使用額については、コロナ禍による影響を踏まえて情報機器や電子的資料等の購入にも充てつつ、書籍等の購入費や成果発表のための旅費が中心となる予定であるが、新型コロナ等の状況に応じて、研究遂行に必要な用途を常に精査して使用する。
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