2018 Fiscal Year Research-status Report
近世の文芸作品に見られるオノマトペー浄瑠璃・歌舞伎脚本を対象にー
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18K00617
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
中里 理子 佐賀大学, 教育学部, 教授 (90313577)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近松門左衛門 / 世話浄瑠璃 / 時代浄瑠璃 / オノマトペ / 中世軍記物語 / 和語と漢語 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世の浄瑠璃・歌舞伎脚本に見られるオノマトペの使用状況と特徴を研究するため、今年度は、近世前期の近松門左衛門の手による浄瑠璃作品を対象として研究を行った。日本古典文学全集『近松門左衛門集』1~3に収載されている30作品(世話物24編、時代物6編)すべてからオノマトペを抽出し、地の文と会話文に分類し、作品ごとに一覧表を作成した。さらに、世話物と時代物に見られる特徴を考察した。 近松門左衛門浄瑠璃の世話物の特徴については「近松門左衛門の世話浄瑠璃に見られるオノマトペの特徴」『佐賀大学教育学部研究論文集』第3集第1号(pp.81-94)にまとめた。ここでは、世話物12編(『近松門左衛門集』2に収載された作品)を対象に、地の文、会話文それぞれに見られる特徴と共通した特徴、中世軍記物語のオノマトペとの関連、和語と漢語のオノマトペの関連などについて考察した。論文発表後には、世話物の残りの12編(『近松門左衛門集』1に収録された作品)、時代物6編(『近松門左衛門集』3に収録された作品)から全てのオノマトペを抽出し、地の文と会話文のそれぞれの特徴をまとめている。 今年度の研究の成果は、近世前期に見られるオノマトペの様相が具体的に明らかになったことである。従来、時代ごとのオノマトペの様相が詳細に研究されてはいなかったが、今回の研究で、近世前期の近松作品において、地の文に中世軍記物語のオノマトペの影響が色濃く残っていること、そこに近世独特のオノマトペが加わっていること、会話文には近世の新しい口語的なオノマトペが多用されていることが具体的に明らかになった。今後は、今年度明らかになった近松作品の特徴をもとに、近松門左衛門以外の作者の作品を対象に調査し、近松作品に見られた特徴が近松独自のものか近世前期全般に共通するものなのかを考えていく。初年度の研究成果は、2年度以降の研究の基盤となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近松門左衛門の代表的な浄瑠璃作品(世話物24編、時代物6編、小学館日本古典文学全集『近松門左衛門集』1~3)を対象にオノマトペを抽出し、地の文と会話文とに分類し、使用状況を一覧表にまとめた。全30作品からオノマトペを抽出して整理する作業にはかなりの労力と時間がかかった。一覧表を作成したうえで。近松作品のオノマトペの特徴について、分析・考察した。 世話浄瑠璃については、地の文と会話文に見られるオノマトペの特徴、中世軍記物語との関連、近松作品に多用されたオノマトペの表現、中世には見られなかった近世のオノマトペの表現と特徴、和語と漢語のオノマトペの関連などの視点からまとめ、「近松門左衛門の世話浄瑠璃に見られるオノマトペの特徴」(『佐賀大学教育学部研究論文集』第3集第1号)に発表した。時代浄瑠璃については、オノマトペの整理を終えて一覧表を作成し、現在、特徴を分析し、まとめている最中である。世話浄瑠璃との比較を交え、時代物独自の特徴とともに、世話物と時代物に共通した特徴についてまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に近松門左衛門の浄瑠璃作品のオノマトペの分析を終えたので、この分析をもとに、2年度は江戸時代中期の浄瑠璃・歌舞伎脚本を対象にオノマトペを抽出して整理し、特徴を分析する。新日本古典文学大系『竹田出雲・並木宗輔浄瑠璃集』『近松半二江戸作者浄瑠璃集』『上方歌舞伎集』に収載されている作品を対象に研究を行う予定である。今年度と同様に、地の文(ト書き)と会話文に分けて整理して一覧表にまとめ、その表をもとに、地の文と会話文に見られる特徴をまとめる。中世の影響や近世の新しいオノマトペの様相、和語と漢語の関連等の視点から分析する。研究の成果は論文にまとめて発表する予定である。 当初の計画通り、3年度は江戸中期・後期の歌舞伎脚本(『東海道四谷怪談』など鶴屋南北を中心に)、最終年度は江戸末期の河竹黙阿弥の歌舞伎脚本を対象にオノマトペを整理して分析し、近世を通して浄瑠璃・歌舞伎脚本に見られるオノマトペの使用状況と近世のオノマトペの特徴をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
今年度、大学より「若手・女性研究者支援費」10万円が支給されたため、科研費から使用する予定の物品費をそちらからまかなうこととなった。書籍に関しては、購入予定の書籍が手に入らないなどの事情により、使用金額が少なくなった。また、1年に3回の出張を予定していたが、勤務校の仕事の関係で出張が2回になってしまい、予定していた旅費の使用額が少なくなった。 来年は、今年度出張できなかった分も含めて4回の出張を予定している。また、今年度大学から支給された研究支援経費がなくなるため、物品費が必要となるが、購入を予定している書籍が当初の計画よりも多くなったため、今年度の予算を次年度に回してまかないたい。
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Research Products
(1 results)