2020 Fiscal Year Research-status Report
ポストモダンと呼ばれる時代のテレビ番組における方言の表象に関する研究
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18K00628
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
櫛引 祐希子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (10609233)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 方言 / テレビ番組 / 表象 / 高齢者 / 共通語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、1990年から2010年にかけて放送された方言をコンテンツにした番組を放送ライブラリーで視聴し(計6本)、番組の構成を記録しながら出演者の台詞とナレーションの文字化作業をおこなった。 視聴した番組は【方言を素材にした作品を取り上げる番組】【方言自体を題材にする番組】【特定の人物に関わる方言を紹介する番組】の3つに分類される。 【方言を素材にした作品を取り上げる番組】の中には「爆笑!津軽弁の日」(青森放送,1991年)のように方言川柳や方言詩を紹介するイベントの公開録画を放送したものがある。こうした番組は、方言がバラエティ番組のコンテンツとなったことを物語る。日常の出来事を方言で描いた川柳や詩を通して方言が暮らしに欠かせない言葉としての命脈を保ちながらも、笑いの対象となる新奇な言葉へと変わりつつあることがうかがえる。 【方言自体を題材にする番組】を代表するのは「菊池幸見の方言探訪~”じゃじゃじゃ”と”ばばば”~」(IBC,2004)である。紀行番組の体裁で感動詞の「じゃじゃじゃ」「ばばば」の境界を探りながら、今なお根強く残る近世の藩(南部藩と伊達藩)の影響を明らかにする。また、感動詞の来歴についても言及し、身近な方言に潜む日本語の歴史を紹介する。方言が地域住民の教養を深める素材として活用された一例である。 【特定の人物に関わる方言を紹介する番組】は、高齢者に焦点を当てた番組に多い。香川で「まんでがん」を合言葉に活動する女性や沖縄でラジオキャスターとして活躍する女性を取り上げた「生きる×2」が代表的な番組である。個人の生活に密着することで、方言が高齢者のアイデンティティに直結することを浮き彫りにするが、同時に高齢者の暮らしも共通語と方言の併用で成立している事実が描かれる。 方言をコンテンツとした放送番組は、方言が担う社会的役割の多面性を表象していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の防止の観点から、本研究で視聴調査をおこなう放送ライブラリー(神奈川県横浜市)が長期閉鎖になったため、計画通りの研究の遂行が不可能となった。 また、放送ライブラリーの利用が再開されても、新型コロナウィルス感染拡大のために予定変更を余儀なくされた諸々の業務遂行が重なり、視聴調査を計画通りに実施することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も新型コロナウィルス感染状況を踏まえながら、可能な範囲で放送ライブラリー(神奈川県横浜市)での視聴調査を実施する。 また、最終年度として今まで視聴した番組の紹介と番組内容を文字化したデータを報告書としてまとめ、関係機関に研究のフィードバックをおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、視聴調査を予定していた放送ライブラリー(神奈川県横浜市)への出張が計画通り遂行できず、「旅費」および出張後の資料整理のための「人件費」を予算通り執行できなかった。 最終年度となる今年度は、感染拡大防止に努めつつ可能な範囲で視聴調査を遂行し、報告書の作成・発送による「その他」とそれに関わる「人件費」を執行する予定である。
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Research Products
(1 results)