2019 Fiscal Year Research-status Report
漢字文化圏における近代二字漢語動詞と形容動詞の発達と交流に関する総合的研究
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18K00629
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
沈 国威 関西大学, 外国語学部, 教授 (50258125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 新漢語 / 2字語化 / 言語の近代化 / 科学叙述 / 日中語彙交流 / 基本語化 / 日本刺激語 / 日本借形語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究業績は、専門書2冊、編著書2冊、関連論文3編。概ね研究計画に基づき、下記の内容で研究を進めた。(1)近代漢字語の二字化における要因に関する分析;(2)中国語に与えた日本語の影響の解明;(3)日中同形語6300語に対し、語源、英華字典類、中国語近代コーパス、日本語近代コーパスでの調査を実施した上、特にサ変動詞語幹2400余語;漢語形容動詞600について詳細に調査。(4)「東アジア近代新語訳語研究プラットフォーム」を構築し、仮運用を開始。本プラットフォームには日中韓近代新語訳語が7720語収録、それぞれの語について、語形、訳出原語、品詞、語源タイプ、出自、中国語の出典、日本語の出典、語誌等について記述。 上記の1-3項目に関しては、『漢語近代二字語研究――語言接触與漢語的近代演化』を華東師範大学出版社より出版。本書では、日本影響語に関しては、A日本語借形語(日本語から漢字形のまま、言葉を借りるというケース);B日本語借義語(文字列は漢籍にあるが、意味は漢籍のものではなく、日本語から借りた新しいもの);C日本語活性語(日本語の刺激によって活性化された漢籍語)という3パターンを提唱した。(3)に関しては、次のような理論的枠組みを打ち立てた:中国語語彙体系の近代化に2つのハードルがある。一、新しい概念は、二字語で表現する;二、既存の概念を表す一字語は、同義の二字語(群)を獲得すること。対して、日本語語彙体系の近代化は、一、新しい概念は、二字漢語で表現する;二、既存の概念を表す和語は、同義の二字漢語(群)を獲得すること。日中両語彙体系は、二字漢語という点に関連づけられ、20世紀に入ってから、日本語が中国語に強い影響を与えた。それを実証すべく、大規模の語彙調査を実施した。また「基本語化現象」について、認知言語学の範疇理論、プロトタイプ理論を修正し、自説を展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的枠組みの確立がほぼ終了し、上述したABC三種類の二字語について、語源を『辞源』『漢和大辞典』『日本国語大辞典』等で調査し、個々の語が訳語として成立していく過程を英華辞書類、英和辞書類で調べた。また、使用頻度の変化を中国語歴史コーパス(『申報』『大公報』)と日本語歴史コーパス(国立国語研究所による「中納言」)によって基本調査を行い、数値化をしているところである。AB類は、学術用語、つまり科学技術関連のタームが中心であり、Cは、叙述語、つまり動詞、形容詞が主である。また考察の視野を明治期の漢字語基本語彙化に広げた。つまり、同義、類義の一群の語が1語のみ基本語として、定着し、その他の語は、表現の深さを司る候補語となる近代語彙体系の形成における顕著な現象である。私の研究は、この現象に対しても解釈性を与え得るものである。漢籍語が19世紀末20世紀初頭、その使用頻度増減の変化を中国語歴史コーパスと日本語歴史コーパスによって、捉えようとするのが、本研究のオリジナリティーである。 特に2019年10月20日、「東アジア近代新語訳語研究プラットフォーム」が構築完了し、仮運用を始めた。本プラットフォームには、日中韓近代新語訳語が7720語収録されている。それぞれの語について、語形、訳出原語、品詞、語源タイプ、出自、中国語の出典、日本語の出典、語誌などについて記述している。
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Strategy for Future Research Activity |
日中同形二字語6300語、及びサ変動詞語幹、漢語形容動詞等に関する語源調査を踏まえ、次のように研究成果を整理し、報告していく予定である。「東アジア近代新語訳語研究プラットフォーム」について、引き続き、中国語の出典、日本語の出典、語誌等の情報を補完し、正式運用を始める。 語源調査によって、漢籍語か否かを分類し、語源記述を完成する。 非漢籍語の一覧表を完成し、A類、つまり日本借形語として、精査し確定する。この部分は、今後の日本語借用語研究において基本となる研究データーとなる。 漢籍語について、詳細に吟味し、B類、つまり近代日本で意味の変化を蒙った語について、その意味の変遷を記述する。意味変化のないものに対し、使用頻度がないかと中国語・日本語コーパスの調査結果に照合し、C類、つまり日本語の刺激によって活性化された語と中国語独自の継承語とわけ、それぞれ記述する。 以上の作業により、中国語に与えた日本語の影響のみならず、中国語の近代語彙体系形成の過程も明らかになるだろう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、予定された国際学会がキャンセルされたため。
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Research Products
(12 results)