2019 Fiscal Year Research-status Report
話し言葉における使用実態調査に基づく日本語の否定表現の使用傾向の研究
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18K00630
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
野田 春美 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (60237849)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 否定 / 話し言葉 / 否定的な語彙 / 否定的な表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本語の話し言葉において,どのようなことが,どのような文脈で否定を使って表現される傾向があるのかを明らかにすることである。主な資料として話し言葉のコーパスを用い,基本的な否定だけでなく,モダリティ形式として固定化しているものも対象として研究を進めている。 今年度は,複数の学会において関連する最新の研究の把握に努めた。また,名大会話コーパス,現日研・職場談話コーパスを対象として,否定表現の収集。分析を進めた。名大会話コーパスの28387件,職場談話コーパスの4022件を,次の16種類に分類した。名大会話コーパスで多かった順に,基本的な否定(形容詞「ない」による非存在も含む),ジャナイカ類,評価(必要),ノデハナイカ類,語内・慣用,モダリティ(主に主にカモシレナイ類),モダリティ否定(主にワケダの否定),評価(不必要),二重否定,評価(非許容),イケナイ類,ノダ否定,否定依頼・禁止,依頼・勧誘,評価(許容),後悔である。 その結果,次の点が明らかになった。(1)2種のコーパスにおける否定表現の使用の傾向は類似している。(2) 否定疑問より,ジャナイカ類(「じゃん」含む),ノデハナイカ類(「名詞+デハナイカ」含む)の使用が多い。 (2)については,ジャナイカ類による確認要求に対して,話を促すようにあいづちを重ねて打つ例が多く見られる一方で,異なる意見をジャナイカ類で返す例も見られた。ノデハナイカ類にも同様の例があった。 なお,この研究成果の一部は,2020年3月6日に開催予定であった社会言語科学会第44回研究大会において招待発表「会話における否定表現の使用傾向」として発表することになっていたが,新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった。ただし,論文集が事前に公開されているため,発表したものとみなされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は,複数の学会において関連する最新の研究を把握したうえで,コーパスを使った調査と分析を進めた。コーパス調査自体は,計画に沿って進行している。 2019年度までの研究成果の一部は,2020年3月6日に開催予定であった社会言語科学会第44回研究大会において招待発表「会話における否定表現の使用傾向」として発表する予定であったが,大会は中止となった。ただし,論文集が事前に公開されているため,発表したものとみなされている。 2019年度の終盤にはフランス出張において対照研究に関する打ち合わせを行うことも計画していたが,諸事情により実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,コーパスの調査結果の分析をさらに進める,さらに,日本語の漫画・小説の会話文のフランス語訳,同じくフランス語原文の日本語訳を用いて,話し言葉における否定表現の使用の調査を進めていく予定である。 なお,8月にヨーロッパの学会で発表予定であったが学会が中止となったため,その計画は変更せざるをえない。状況に応じて,研究成果の発表方法を検討していく。
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Causes of Carryover |
予定していた海外出張が実施できなかったことにより,次年度使用額が生じた。 2020年度は,新型コロナ感染症による国際的な移動可否状況も考慮しながら,研究協力者との打ち合わせや研究成果の発表を進めていく。 また,引き続き,データ整理の謝金を必要とする。
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Research Products
(1 results)