2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00667
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
奥 聡一郎 関東学院大学, 建築・環境学部, 教授 (30288089)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コーパス文体論 / 英米児童文学 / 意味タグ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第一段階として英米児童文学の代表的な作品群を、時代・著者・サブジャンル・対象年代別に分類し、それぞれの包括的な言語的特徴を網羅的にレベル別に記述していくことを目標とした。その中でコーパスの活用を前提に、いろいろなサイトから今後に活用できるコーパス資料を検索し、研究のための基礎資料とした。特に英米児童文学の倫理性など主題に基づく意味タグなどの分析からサブジャンル毎に分類をしていく中で品詞の頻度などと相関的な特徴を指摘する基礎的な分析を開始した。 分析としては作品ごとの品詞タグによる頻度、コロケーション、nグラムなどの特徴的な項目について精査し、英米児童文学の読みやすさを生み出す、語彙レベルの諸相を概観した。また文レベルでは修飾語句、関係詞などの埋め込み型いわゆる複文構造の多寡などの分析の視点を明らかにし、特徴的な観点について考察を加えた。 実績としてはPALA(国際文体論学会)の参加でコーパス文体論の最新の研究成果に触れ、研究方法に修正を加えたほか、イギリスにおける最新の児童文学作品や批評などの文献を収集し、研究資料に加えた。また、分析ツールとしてWmatrix4などの精度の高いツールの活用をはじめ、コーパスの分析に必要な資料や手法などを先行研究からまとまている。特に英米児童文学の教材化にかかわる事例についてこれまでの文学作品の教材化にかかわる研究成果に照らして、注意点をまとめて成果発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
児童文学の文体論の先行研究とコーパス文体論の枠組みについては、児童文学の定義の概観から始め、歴史的な背景を踏まえて文体の観点から先行研究を収集した。先行研究の批判的検討から、ジャンルの文体を探る上でのコーパスの活用、コーパス文体論の枠組みを導入して、新たな知見を得られるように試みている。 コーパス文体論による分析の前提として、分析に用いる英米児童文学作品群のコーパスについて、無料で入手可能なコーパスの調査活用と学術的に利用料のかかる専門的なコーパス(Oxford Children’s Corpus)の検証などコーパスの統一的なアノテーションに関わる実態調査まで行う。これまで自分で構築してきたPuffin Booksのコーパスや絵本のコーパスなどを再活用し、ジャンルや時代などのアノテーションも考えながら、分析のための素材を渉猟する。また、コーパスの分析ツールも様々なプラットフォームで開発がなされているが、freeで利用できるツール、academic licenseが必要なツールなどを軸に活用できる分析の観点を考察していった。 分析としては、品詞別タグによる頻度分析を進めている。進捗状況としては国際学会での参加を通して資料収集、研究における情報交換などがある。コーパスの編集なども分析ツールの先行研究と並行して進んでいる。ただし、最新資料のコーパス化などは一部完了していない他、コーパス文体論の分析の発表が紀要論文、口頭発表に終わっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、Wmatrix4を活用した意味タグによる頻度分析を中心に行う。作品毎のKey Words分析から意味的な分布の偏差をジャンルや歴史の観点から探る。特に感情や好悪、倫理性に関わる意味タグがどのようにジャンルや対象年齢別の作品群に特徴的に見られるかを考察する。また、文法タグによる頻度分析としては英米児童文学作品に特徴的に用いられる構文や時制、態、法などを大人の作品群と比較対照し、言語習得の順序と相関していることを明らかにする。さらに子供向けにretoldされたgraded readersと児童文学作品の言語的特徴の関係性に着目し、教材に適する言語的特徴の抽出を目指してコーパス文体論でできうることを明らかにする。 また、分析の成果の発表に注力するよう、分析を続ける予定であるが次年度は、International Association of Literary Semantics (IALS=国際文学意味論学会)におけるファンタジー作品の現実世界と想像上の世界における描写の違いをコロケーションなどから探る口頭発表、PALAにおけるファンタジー境界における文体の違いを口頭発表するほか、日本国際教養学会(JAILA)においてコーパス文体論と第二言語習得の知見の融合を試みた内容の口頭発表を予定しているほか、学内紀要にも論文投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
国際学会における資料収集予定が思ったよりも少なかったため、次年度使用額が生じた。またコーパスに使用料などのクレジット決済が年度をまたいだこともあり、次年度に繰り越す額が大きくなっている。
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Research Products
(3 results)