2022 Fiscal Year Annual Research Report
Linguistic features in the Queen Elizabeth I's correspondence and her linguistic view of English as a national language
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18K00675
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
平 歩 九州工業大学, 教養教育院, 講師 (40761200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 剛 (向井毅) 福岡女子大学, 公私立大学の部局等, 学長 (40136627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 個人言語 (idiolect) / 迂言的do / 関係代名詞 / レトリック / 国民意識(nationalism) / 宗教改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、エリザベス一世が約60年間に認めた書簡を分析対象とし、以下3点の課題の解明を試みている:(i)即位の前後で語選択や統語に変化はあるか;(ii)書簡の送り手によって言語使用は異なるのか;(iii)英語の再評価や国民意識の高揚を背景に、国民言語としての英語にいかなる言語観を持っていたのか。本年度は、上記(i)および(ii)の質的分析の精度を上げるため追加で調査を行った。そして、エリザベスの言語的特徴 (idiolect)の分析結果や先行研究をもとに(iii)について考察した。 肯定平叙文の迂言的doの使用については変化(減少)を先取りしたと言える。とりわけ、スコットランド王ジェームズ六世への書簡ではほとんど使用されていない。スコットランド英語ではこの用法は稀で、エリザベスが彼の言語使用に合わせた可能性がある。 人を先行詞とする主格の関係代名詞についても変化(whoとwhichの共起→who)を先取りしたと言える。上流階級が使い始めたと考えられているが、中流階級による使用率の方が高かったとするデータもある。エリザベスが彼らの影響を受けた可能性は社会ネットワーク理論の一つの概念であるGranovetterの “The Strength of Weak Ties (弱い紐帯の強み)”で説明できる可能性がある。 国王や国家を指すRoyal‘We’は後継者となるジェームズへの書簡の中で巧みに使用されており、'We’に彼(スコットランド)を包括することによって説得のレトリックとして機能している。 エリザベスが意図的に英語の変化を牽引したという証拠は見出せなかったが、自身の言語使用では変化の先取りをしていた傾向が高いと結論づける。また、自国語である英語を積極的に使用し、書簡の送り手や目的に応じて言葉遣いを変え、レトリックを使用していたことも考察できた。
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