2019 Fiscal Year Research-status Report
植民地朝鮮における日本語教育~計量言語学的手法から見る学校教育と社会教育との連携
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18K00685
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上田 崇仁 南山大学, 人文学部, 教授 (90326421)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植民地朝鮮 / 国語読本 / KHコーダー / 対応分析 / 共起ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
植民地朝鮮で使用された「国語読本」の本文の電子化を謝金の枠組みで進めた。複数人への依頼であったため、指示が徹底していない部分もあり、すぐに利用できないデータも散見したが、修正しつつ、研究を進めた。計画通り、KHコーダーを活用しての、質的研究(テキストマイニング)を進めた。 まず、使用頻度上位30語および上位60語、それぞれの共起ネットワーク図の作成と分析からは、日韓併合直前に使用された教科書の巻一は、日常生活と社会の近代化に伴った新文物を取り上げていることが明確となり、単純な語彙と文型教育が行われていたわけではないということを示すことができた。また、対応分析図の作成と分析からは、頻度高く使用されている語彙はより初期の教材に採用されており、定着のために反復して使用されていることが分かった。言い換えれば、課によって新出事項を積み重ねていくというスタイルというよりも、反復使用による定着を図っている部分が濃厚であるということである。その、使用頻度が高いという語彙は、基本的に学校内、教室内の語彙であった。近代学校の中で、また、学校教育を日本語で進めようとしていた意志をくみ取ることができたと思う。 こういった研究成果の公開は、当該年度、中華人民共和国 山東大学における国際シンポジウムの基調講演の一つとして研究の一部を発表したこと、さらに、研究誌に論文を投稿し掲載することで進めた。 今回は、資料の修正が終わったものを一部取り扱ったにとどまっているが、今後資料の整理を進め、通時的に、且つ共時的に教育内容を分析していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択初年度、旧勤務先での研究室の移転作業に伴う資料使用の障害があったこと、年度末に現勤務校への移転があり、データ入力の外部委託が困難であったことなど、元データとなる教科書本文の電子化が著しく遅れた。また、採択二年次度、電子化を行ったが、複数の方への発注となったことから、こちらの指示がうまく通らず、そのまま使用できるデータではなかったため、データの修正と整理をしつつの分析となり、思ったほどの量が扱えなかった。ただ、いずれも、5年計画の中で致命的なものではなく、おそらく、採択3年次度には、遅れは取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一旦入力を終えたデータが適切かどうかを確認し、不適切なデータについては、外部に委託し、データが使用できる状況に整えていただく。そのうえで、データ分析を進める。 本研究が学校教育のみを対象とているわけではないので、これらの作業に一定のめどがついた段階で、学校教育外で行われていた「国語」教育の教材についても、入力作業を進めたい。 新聞紙上の日本語講座も視野に入れているため、マイクロフィルムの活用も検討している。マイクロフィルム自体はすでに以前の科研で購入しているが、マイクロフィルムリーダーが自由に使える環境にないため、新規に購入を検討しているところである。
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Causes of Carryover |
謝金支払いによる電子データ化作業が予定数終えられなかったこと。新しい勤務先に移ったことから調査等に出かけられる時期の把握がうまくいかず、出張調査の実施について状況を見定めていたところ、年末から年度末にかけての調査のための出張が新型コロナウィルスの影響ですべて取りやめとなったことが理由として挙げられます。 現状、出張を伴う資料調査や、出張を伴う対面調査が実施できる見込みが立たないため、予定していなかったが、マイクロフィルムリーダーを購入し、資料確認作業を増やしていきたいと考えている。
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Research Products
(4 results)