2018 Fiscal Year Research-status Report
ロシア極東地域における日本語教育の歴史的背景と現状に関する基礎的研究
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18K00726
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
竹口 智之 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科特任常勤講師 (80542604)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語教育 / ロシア極東地域 / ライフ・ストーリー / 日本語教育史 / 言語政策 / 複線経路・等至性モデル(TEM) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ロシア極東地域における日本語教育を牽引する都市の一つである、ユジノサハリンスク市の日本語教育の勃興と現状を分析している。訪樺は当該年度の9月と翌年3月に行われた。分析は以下の二つの柱から成る。一つはサハリン国立資料館に保管されている、高等教育機関の議事録を分析することである。分析の結果、日本語科へのサハリン社会からの期待はかなり大きく、大学はもちろんのこと、新聞等でも広報がされていたことがわかった。 いま一つは、現職日本語教師、元学習者、教育管理職などへのインタビューである。3月には現職の大学教員3名と教育管理職1名にインタビューを実施した。9月には現職の大学教員6名と、元学習者2名、教育管理職2名にインタビューを実施することができた。分析の結果は以下にまとめられる。 (1)1980年代中頃のサハリン州は経済的に切羽詰った状況であり、語学によって窮状を打開しようとする気概があった。(2)80年代、大学で日本語教育が始まった際、学生の中には幼少期から日本人・日本語・日本文化に触れていた者もいた。この日本人は当時の追憶から、ロシア語を使っていたが、彼らの生活習慣から日本語への興味を抱いた学生もいた。(3)設立当初は外国語教育学に熟知した教員がおらず、恐らくは自身がかつて受講した英語の授業の慣行を実施していた。(4)ロシア人大学教員は90年代後半から今世紀初頭にかけて、教職は他の職種と比較して低待遇であった。この苦境は、学生の反応・成長を見ることによって自身の拠り所としていた。(5)現在、サハリンで日本語を教える教員の中には、かつてサハリン州で日本語を使用した企業に一旦就業したものの、諸事情により、より低待遇である教育職に転向せざるをえなかった。これは今後移民を一定数迎え入れる日本社会への提題となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、大学教育関係者に5名(ロシア人4名、日本人1名)インタビューをする予定であった。ロシア人教員は3名のインタビューとなったが、日本人教員1名にインタビューすることができた。また、当初の予定だけではなく以下の3名から貴重なインタビューを聞くことができた。 A氏…資料収集をしている最中、大学では日本語専攻であり、日本語が堪能な元学生である。この方の日本語は非常に流暢で、大学における日本語教育開始直後の話だけではなく、小さな村の初・中等教育機関で受けた日本語教育の概要も聞くことができた。 B氏…サハリン州出身ではあるが、大学での日本語教育はウラジオストクで受けた。サハリンだけではなく、ウラジオストクでの具体的な言語状況を聞くことができた。 C氏…90年代、ユジノサハリンスク市と、ウラジオストクで日本語教育に携わった日本人教員である。90年代の極東地域の日本語教育の概要を伺うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は2回の訪露(ハバロフスク)を計画している。2018年度と同様に、以下の2点で調査を進める。 (1)現地で日本語教育が始まった経緯を示す書類・文書の検索 (2)現職の大学・初中等教育機関で日本語を教える教員へのインタビュー
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Causes of Carryover |
計画していた当初よりも急激なルーブル高となったため、航空券がかつてと比較し、若干安めになった。また、当初依頼していた現地翻訳・通訳者の都合がつかず、代わりに調査者の知人に打診したところ、大幅な安値となった。ただし、これは今回の調査地が調査者のかつての居住地だったため可能になった。 余剰分は文字起こしの費用に回し、研究成果の迅速な発表を心がける。
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