2021 Fiscal Year Research-status Report
ロシア極東地域における日本語教育の歴史的背景と現状に関する基礎的研究
Project/Area Number |
18K00726
|
Research Institution | Osaka University of Tourism |
Principal Investigator |
竹口 智之 大阪観光大学, 別科, 講師 (80542604)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウラジオストク市 / ハバロフスク市 / 日本語教育史 / 学びのアイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
インタビューは主に2期に分けて実施した。下記のインタビューは,オンラインによるものと,感染拡大の狭間に日本国内の協力者在住地で行ったものである。 第1期は4月から6月にかけて,ハバロフスク市において,80年代後半から日本語に触れ,学んできた者を対象に行った。分析の結果,冷戦終結から融和,さらにソ連消滅へと経緯する中,当人らは生きる手段として日本語を選択し,言語学習による自己投資(Norton 1995)を行っていたことが明らかになった。さらに,ハバロフスク市における日本語教育は日本への「出稼ぎ」を念頭においた学生も存在していたことが窺えた。 第2期は10月から11月にかけ,ウラジオストク市において,90年代中頃から日本語に触れ,学んできた者を対象に行った。分析の結果,学生のほとんどは「英語以外でかつ欧州言語以外の特別な言語」として日本語を選択していたことがわかった。当初は生きる手段としてというよりも趣味や知的好奇心として選んだ言語が,徐々に生きる術となり,日本社会を通して自己実現を果たしたことが明らかになった。 両都市において,90年代初頭というのは日本とロシアが様々な面で共同事業を図った時代であることがインタビューから窺えた。しかし,その後極東地域における日本語教育は,大規模な学習者拡大とはいかず,また日本語を生かした仕事に就いたのは少数である。このことから「経済事業としての日本語教育の在り方」が問われていると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度同様、COVID-19により、当初予定していたウラジオストクへの渡航は中止にせざるを得なかった。COVID-19の流行りの谷間(9月)に、ウラジオストクの元日本語学習者が在職している教育機関に出向き、そこでは貴重なインタビューを実施することができた。しかしながら、予定していた3月の訪問は再びCOVID-19が流行し、移動が憚られる事態となった。 また、自身の異動の準備が重なり、まとまった期間を設けて訪問することが時間的にも難しい状況であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
COVID-19のみならず、ウクライナ戦争の勃発により、ロシア訪問は極めて実現困難と思われる。このため昨年同様、ウラジオストクで日本語を学び、日本に在住する元学習者を訪問し、インタビューを実施することを試みる。また、訪問がかなわない場合はzoomなどの通信手段を用いたインタビューを実施したい。しかしながら、昨今の状況から、日本に在住するロシア人に対する誹謗中傷・嫌がらせや、マスコミなどによる心無い報道もあるという。このため、調査対象者を募りつつも、彼らの心身の安全性を優先しなければならない。
|
Causes of Carryover |
COVID-19により,当初の2回にわたる訪露計画が実施不可能となった。このため,旅費・滞在費を大幅に削減し,書籍購入などに変更した。
|