2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00808
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 一美 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90435305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木津 弥佳 (田中) ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (00759037)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 韓国語母語話者 / 英語母語話者 / 日本語学習者 / 英語学習者 / selo / お互い / Argument Ellipsis / 非顕在的要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年目となる2019年度は、5種類のデータを収集し、2つの国際学会で発表、5本の論文を執筆した。 【データ収集】前半はL1韓国語の日本語学習者(K-JFL)21名、日本語統制群21名からデータを収集し、L1日本語の英語学習者(J-EFL)を対象とした実験準備も開始した。日本語の空項が主語・目的語位置に関わらずpro分析では説明ができない解釈を持つことから、空主語の解釈も検証していくことにした(実験文数は計36)。後半は65名のJ-EFLからデータを収集し、イギリスの大学でL1英語の日本語学習者(E-JFL)34名、英語統制群19名からもデータを収集した。 【国際学会発表】ELSJ 12th International Spring Forumでは、K-JFLのあるグループが日本語の空目的語に厳密な同一性解釈を許容しなかった結果から、韓国語の「selo」と日本語の「お互い」とは統語の内部構造 [NP proi [N otagai]] が異なること指摘し、「selo」の名詞句内部構造にproが存在しないことを主張した。またGALA 14では、上級E-JFL(パイロットデータ)が相互読みの解釈を許容しなかったのは、L1の影響でvに解釈不可能なφ素性を保持しているからであることをTakahashi (2019)の Derivational Argument Ellipsisの枠組みを用いて主張した。 【論文執筆】ELSJでの発表内容を論文にまとめ、また、L1が異なる日本語学習者グループによる空項の解釈、およびL1や習熟度の異なる学習者の「自分」を先行詞とする空項の解釈についての論文が「Journal of Monolingual and Bilingual Speech」、「Kwansei Gakuin University Humanities Review」、「言語と文化」、「第二言語習得研究モノグラフシリーズ4」に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は幅広く習得現象を検証することを目的とし、K-JFLからデータを収集し、成果も発表できた。またJ-EFLを対象とした実験準備と、E-JFLを対象とした実験準備を並行して進めることで作業効率が高まり、J-EFLグループの実験後にE-JFLグループの実験もイギリスで実施することができた。そしてJ-EFLのデータ結果をふまえ、3つの学会に要旨を提出した。さらに、本年度はスペインの大学の先生方とのネットワークを活用し、実験時期および被験者の確保について話を進めることができた。実験アイテム作成に必要なスペイン語への翻訳作業についても協力者を確保済みであり、いつでも実験アイテム作成作業を開始できる状態である。 理論的には、相互代名詞を先行詞とする空項の解釈に関して統語の内部構造をふまえた分析を進めることができ、さらに、項削除を統語派生の中で扱うDerivational Argument Ellipsis (Takahashi 2019)を、異言語間習得を説明する枠組みとして採用した。今後も統語的な分析を進めていく予定であり、習得データの説明を統語論にかぎらずに検証していく準備も始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに収集済のE-JFLデータの集計作業、分析作業を開始する。そしてこれまでに収集したデータの検証にとりかかり、それらをふまえ、成果発表の準備を進めていきたい。また、L1スペイン語の日本語・英語学習者(S-JFL, S-EFL)、およびL1英語のスペイン語学習者(E-SFL)を対象とした実験については、現在の感染症に関する状況を勘案しつつ、引き続き、スペイン、アメリカ、カナダの大学の先生方のネットワークを活用して、データ収集のための時期や実施形態など、話を進めていきたい。また、項削除の研究成果について検証を行うため、統語以外の観点から説明できる可能性について探っていきたい。
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Causes of Carryover |
来年度への繰越金額は、573,224円である。9月の国際学会での発表と2月末~3月初旬のイギリスでのデータ収集の際に、研究分担者が本務校の業務の関係で日程的に渡航が叶わなかったためその渡航費分が未使用であったということが主な理由である。本研究の遂行には全く支障はなく、上記の学会発表およびデータ収集については問題なく終了できている。次年度にはスペイン語母語話者の日本語・英語学習者を対象としたデータ収集を予定しており、その際の渡航費として使用を計画している。
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