2018 Fiscal Year Research-status Report
Analyzing intervention effects in Japanese EFL learners' acquisition of raising and relative clause constructions: An interface approach
Project/Area Number |
18K00834
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉村 紀子 静岡県立大学, その他部局等, 客員教授 (90129891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 敦之 静岡県立大学, その他部局等, 准教授 (80626565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 主語繰り上げ構文 / 介在効果 / A-移動 / 母語干渉 / 経験者句 / 局所性 / 受け身文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本人英語学習者が英語の理解時に影響を受ける「介在効果」について統語と意味のインターフェイスからその要因を探り、その問題を克服するための学習方策を提案することが目的である。2018年は、まず、主語繰り上げ構文(John seems to Mary to be happy.)について、子供の英語母語話者に見られるように、経験者句to Maryによる介在効果が日本人英語学習者にも観察されるかどうかを実験において検証し、その影響によってseem構文の理解がむずかしく、習得が遅れることが実証的に確認した。続いて、このむずかしさの本質を明らかにするために、「構文の複雑さ」「局所性」「母語干渉」という3つの観点から調査を順次に進めて行った。 大学1~2年生を対象に実施した一連の実験の結果、実験に参加した成人英語母語話者の理解と比べて、次の3点が示唆されたー①主語繰り上げ文は日本人英語学習者が「A-移動」(不定詞の主語が主文節の主語位置に移動する操作)を習得していないため、英語母語話者の構造と異なり、[John seems [to Mary to be happy]]と誤って表示される。②その結果、多くの日本人英語学習者は局所性に従い、不定詞の主語を誤ってMaryと考える。③この誤りは、A-移動の統語上の複雑さに加えて、A-移動による主語繰り上げ文が日本語にないために生じる母語干渉によるものである。 また、学習方策を考える上での手がかりとして、経験者句に固有代名詞と代名詞を用いて両者間の介在効果の差異を調査した結果、有意差は観察されず、介在効果は意味-語用の領域ではなく、統語の領域での問題であり、構造の学習指導が重要であると指摘された。さらに、2019年度研究への橋渡しとして、A-移動のもう一つの構文である英語の受け身文の理解について介在効果の影響に関する実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A-移動を想定する英語の代表的な構文には主語繰り上げ文と受け身文があり、2018年度は日本人英語学習者による主語繰り上げ文の理解に関して数回の実験を実施した結果、その習得のむずかしさの要因を「介在効果」と「母語干渉」に絞ることができた。 次に検証すべき課題は、この結論が日本人英語学習者による受け身文の理解においても支持されるかどうかについてであった。そこで、数量詞を含む主語繰り上げ文と受け身文の容認度判断テストを実施した。実験の結果、両構文において「介在効果」の影響が観察され、両者間で顕著な有意差ではなかった。 さらに、主語に前置詞句を含む主語繰り上げ文と受け身文について真偽判断テストを実施し、「母語干渉」を調査した。例えば、次のような実験文が用いられた。(1a) *After the business trip appeared to be feeling sad for Jane.(1b) *On the plane was served good wine。実験の結果、日本人英語学習者はこのように文頭に前置詞句を置くことについて、両構文とも誤って容認することがわかった。 各調査の結果はそれぞれ2018年3月に中国・清華大学と米国・オハイオ州立大学で開催された学会・ワークショップにおいてすでに発表済である。この2つの実験は当初の2018年度計画では予定していなかった研究内容で、2019年度での研究展開の基盤構築に繋がったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究は次の3領域において展開する。第一に、日本人英語学習者のL2文法が英語母語話者のL1文法と同様に実際に主語をA-移動しているか、あるいは母語干渉によって主語を移動せず基底生成しているかを追跡調査する。 例えば、日本語では文頭に前置詞句が可能で、英語では不可能であるという相違点に基づき、次のような非文法的な文に対する成人英語母語話者と日本人英語学習者の判断を追跡調査する。(1a)*Yesterday appeared to be full for Amy、(1b)*Early in the morning are picked strawberries。誤って容認されれば、A-移動ではなく、基底生成説が支持されることになる。 第二に、受け身文でby-句による介在効果が生じるかどうかを調査する。例えば、John is believed by Mary to run faster than Billにおいて、不定詞節の主語としてJohnあるいはMaryを選択するかを検証する。さらに、関係節における介在効果の調査を開始する。介在効果がA-移動のみならずA-バー移動の習得にも見れらるかどうかが考察の焦点である。 第三に、「局所性」と「母語干渉」の交差する接点での習得について検証する。英語の再帰代名詞と異なり、局所性に従わない日本語の再帰代名詞の事実に基づき、主語繰り上げ文で日本人英語学習者がどのように解釈するかを分析する。(2) Yuko seems to Masaru to make (himself, herself, themselves, don't know)available to do more work。再帰代名詞のhimselfかherselfを選択によって、その先行詞、つまり不定詞節の主語をYukoあるいはMasaruと判断するかを調査する。
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