2021 Fiscal Year Research-status Report
Analyzing intervention effects in Japanese EFL learners' acquisition of raising and relative clause constructions: An interface approach
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18K00834
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
吉村 紀子 静岡県立大学, その他部局等, 客員教授 (90129891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤森 敦之 静岡県立大学, その他部局等, 准教授 (80626565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 介在効果 / 目的語関係節 / 有生性 / 相対最小性理論 / インターフェイス理論 / フォーカスプロソディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、英語の理解時に影響を受ける「介在効果」の要因をインターフェイス理論の観点から探究し、その成果を学習指導の提案に繋げることを目的とする。これまでの研究では、コントロール文、タフ構文、繰り上げ構文、受け身文の理解について日本の高校生と大学生を対象に一連の実験を実施し、fillerとgapの照応関係に介在する名詞が影響を与えるため理解がむずかしくなることがわかった。 これらの成果を踏まえ、2020年度以降の研究では、日本人英語学習者が関係節を理解する上で主語関係節より目的語関係節の方がむずかしいとされる問題について「介在効果」を軸にその根底にある要因の解明を目指した。実験の結果、先行詞と関係節の目的語の照応関係に関係節の主語が影響を与えることが明らかになった。 一方、ロマンス語の母語習得研究では、介在名詞の素性によって目的語関係節の理解度が異なるという結果がRelativized Minimality (Rizzi,1990) に基づき提示されている。そこで、本研究では名詞の素性に焦点を置いた調査を開始した。最初の課題は「ジェンダー素性」で、例えば先行詞の名詞を男性そして介在主語を女性にして多肢選択問題で調査した。結果では大学生の理解に顕著な違いは見られなかった。英語ではジェンダーが文構造に影響を与える素性でないためではないかと分析した。 続いて、「有生性」の素性に考察の焦点を置いて実験を行なった。関係節の内容と絵の一致を問うリスニングとリーディングの調査で、大学生にとって「有生物」対「無生物」の対比より、無生物が先行詞の目的語関係節の理解が最もむずかしく、先行詞と介在名詞の両方が有生物である目的語関係節が最も容易であった。これらの結果から、素性より日本語の特性がより重要な要因であることが示唆されたと分析した。これらの成果は2021年度開催の3つの国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究がやや遅れている大きな理由は、2021年度も多くの授業がオンラインであったために対面での実験が十分に実施できなかったことにある。もう一つの理由は、後期になって英語の主語関係節と日本語の目的語関係節の理解度に関してリスニングのパイロット実験を実施したが、環境的および時間的な制約によって対面による本実験の実施までに至ることができなかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度後半にパイロット実験を実施したが、その背景と目的は以下の通りであった。 2020年度以降の研究では、「目的語関係節が主語関係節より理解がむずかしい」という一般的な前提で介在名詞の照応関係に与える影響を調査してきた。ところが、2021年度の国際学会発表時に「有生性が日本人英語学習者の英語の主語関係節の理解に、また母語の日本語の目的語関係節の理解に影響を与えるかどうかを実証的に検証した上で考察を進める方が望ましいのではないか」というコメントがあった。この助言に従い、また日本語母語話者による「主語関係節」対「目的語関係節」の理解の対比で有生性の介在効果という視座から考察した先行研究がほとんどない点を踏まえ、大学生を対象にパイロットで実験を実施した。その結果、日本語の目的語関係節の理解では平均正答率97.5%で関係節の主語による介在効果は全く見られなかった。また、英語の主語関係節の理解では全般的に理解に問題はなく平均88.5%の正答率であった。ただし、習熟度の低い大学生には名詞の単語(例えば、rock、dog)の発音を適切に識別できないために生じたと考えられる誤答が数多く見られた。今後予定する本実験ではこのような音声面の問題に留意してテスト文を作成しなければならないことを再確認した。 2022年度はこのパイロット実験の結果に則して本実験を企画し順次遂行していく。特に、実験では「主語関係節」対「目的語関係節」に「有生物」対「無生物」を加えて実施したいと考えるので、テスト文の企画には細心の注意が必要である。さらに、時間が許せば、学習指導への提案を模索する上で、関係節の英語プロソディ教育が目的語関係節の理解力の向上に役立つかどうかを実証的に検証できればと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度、コロナで計画していた実験調査が対面で十分に実施できなかったので、被検者への実験参加費用も含めて支出する必要がなかった。また、国内外の学会発表や海外研究協力者とのミーティングもオンラインでの実施となり、出張旅費や謝金の経費が生じなかった。 2022年度は「有生性」の素性の及ぼす介在効果の検証を軸にして日本人英語学習者による主語関係節と目的語関係節の理解について積極的に実験を行なう予定である。一連の実験に要する被験者への参加費用、実験文のレコーディングを担当する英語母語話者への謝金、国際学会での成果発表に係る出張旅費等に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)