2019 Fiscal Year Research-status Report
A proposal of a speaking/writing integrated instruction method to teach English conversation to Japanese EFL learners
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18K00886
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
竹田 らら 東京電機大学, 工学部, 講師 (80740109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 英会話指導 / 創作文活動 / チャット形式作文 / 話し手交替 / 他者反復 / 基盤化 / 語用論的側面 / 相互行為 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、会話とチャット形式作文で、他者反復が参与者間の相互理解を確立していく過程(基盤化)に与える影響に加え、視線配布と他者反復との関係にも着目し、会話とチャット形式作文でのやりとりの進行を分析し、語用論的側面の指導法について考察を深めた。以下、主な研究実績を挙げる。
(1) The 58th JACET International Convention(2019年8月29日 於 名古屋工業大学)で口頭発表。他者反復による基盤化の過程を分析すべく、日本人英語学習者間の英会話での連続する他者反復に着目し、話題を継続させたり修復を引き出したりする様子を観察した。また、視線と他者反復に着目し、相互理解を構築する補助として「承認」の過程を考察した。その結果、会話での理解の「承認」は、対話者への相互依存性を示し、目をそらすか上を向いたところから、うなずきで対話者を見るまでの目の動きと、適切な単語を見つける手助けになる継続的な単語レベルの他者反復の組み合わせで達成されることを明らかにした。
(2) 日本語用論学会 第22回大会(2019年11月23日 於 京都外国語大学)でワークショップ企画と口頭発表。言語実践についてどのように学び、教えることができるかという点から、語用論的側面の指導や運用を促進する方法を模索するというワークショップ企画の下、相互行為での話題展開と参与者間の理解共有について、日本人英語学習者ペアによる会話とチャット形式作文での反復表現を、理解の基盤化過程から分析した。その結果、会話では1つの話題に対し理解を確認する反復表現が多く、チャット形式作文では語句の反復に加え、関連情報の積み重ねが多かった。そこから、反復表現の語用論的側面に関する学習内容を教室外で生かす際に、「コンテクストに応じた相互行為」について、各学習者が把握し対応する必要性を提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究計画で提起した問題に対し、複数の口頭発表や予稿集掲載論文の執筆、また、2020年度に掲載が予定されている国際学術書への寄稿を通して、一定の成果を発表できている。このことは、「大学生を対象とするスピーキングの教育にライティングを採り入れて、その協調性と表現力を高める方法を検証する」という研究目標の達成と、当該分野に対する貢献を後押しするものとなっている。また、2019年度は、参与者間の相互理解を確立していく過程(基盤化)を詳かにする相互行為分析を行うことで、「自発的かつ協調的に発信するための教育を提供する」という、本研究プロジェクトが目指す学術的課題への解決策を導く手がかりを得ることができた。
特筆事項として、2018年度に引き続き、2019年度も、日本語用論学会の年次大会にてワークショップを企画し、チャット形式作文を導入した英語教育の実践例を語用論的側面の指導における課題につなげて議論しており、それが次年度の研究遂行に大きく寄与するものとなった。しかも、2018年度は、広義の語用論的側面が必ずしも言語教育の現場で指導、運用しきれていない現状を問題として提起し、相互行為の分析を通して、協調性や意味交渉などの動的な営みを実践的に研究し、その知見を広く共有することを試みたが、2019年度は、日本人学習者のみが所属する教室での英語の授業のみならず、そこからさらにグローバルな視点で、語用論的側面を育むには何が求められているのか、また、英語を含む外国語で、何を、どのようにやりとりしていったら良いかを模索していく場を提供するという、今世紀の外国語教育で求められている課題に対する研究の可能性を追求した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、以下4点の計画を推進する。
(1) チャット形式作文を指導に採り入れる前と後で、相手の質問への応答・あいづち・理解確認の方法が異なるか否かについて、基盤化の観点から明らかにしていく。その際、会話データに加えて、チャット形式作文データでの相互行為も分析対象とする。(2) 過去2年間で収集したデータの被験者間に習熟度の差があることから、創作文活動の導入によって、この習熟度の差が会話の上達への貢献度に影響を及ぼすか否かについて検証する。その際、会話での話し手の交替方法に膨らみが増し、円滑なやりとりができたかという点に着目する。(3) データ解釈や考察の妥当性や説得力を高めるべく、語用論・社会言語学・会話分析に加え、創作文活動を含めた英語教育や異言語(異文化)コミュニケーション教育に関連する文献を拡充させる。(4) 関連分野の学会や研究会などで定期的に研究の進捗状況を報告し、他の研究者から受けた助言をもとに、国内外の複数の学会誌に投稿する。
なお、2020年度が当該プロジェクトの最終年度にあたることから、創作文活動を採り入れた会話指導法を広く実践していくには何が必要かを、総括として考察する。その際、学生の習熟度に合わせ、より自発的に相互行為を達成させるにはどのような方法が効果的かという視点に立ち、暗示的指導(気づきの醸成)・明示的指導(パターン学習)との併用も視野に入れ、内容を膨らませたやりとりで場面に即した話し手の交替が成果として現れる方法は何なのか、その解答への手掛かりを提供していきたい。
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Causes of Carryover |
3月中旬から下旬にかけて、「日本女子大学 文学部・文学研究科 学術交流企画シンポジウム『第二回 相互行為と語学教育』」と「JACET 談話行動研究会」の2件の研究会に参加する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、相次いで中止となった。そのことにより、こちらの科研費基盤研究が「共催」の形でその運営に関わっている「日本女子大学 文学部・文学研究科 学術交流企画シンポジウム『第二回 相互行為と語学教育』」での招待発表者への交通費の出費、ならびに、上述の2件の研究会への参加に関わる申請者(竹田)の交通費の出費がなくなったため。
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