2020 Fiscal Year Research-status Report
A proposal of a speaking/writing integrated instruction method to teach English conversation to Japanese EFL learners
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18K00886
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
竹田 らら 東京電機大学, 工学部, 講師 (80740109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 英会話指導 / 創作文活動 / チャット形式作文 / 非言語行動 / 相互行為 / 他者反復 / 基盤化 / 語用論的側面 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、前年度までに集めたデータについて、特に、他者反復と視線配布や頷きとの共起に焦点をあてて分析し、会話とチャット形式作文でのやりとりの進行から、「国際共通語としての英語」という視点も採り入れ、語用論的側面の指導法に関する考察を発展させた。以下、主な研究実績を挙げる。
(1) 日本女子大学文学部・文学研究科学術交流企画シンポジウム 第二回「相互行為と語学教育」(2020年12月19日 於 オンライン)で口頭発表。日本人英語学習者間の英語会話に着目し、連続した他者反復による基盤化について視線配布との関係で考察し、学習者が第二言語で効果的にやりとりする手がかりを提供した。現行の話題を引き出す事例の分析から、会話での相互理解は、連続した単語レベルの他者反復と視線配布や頷きを組み合わせて達成されるが、特に、言語面に加えて、視線を合わせることで、互いの距離を近づけて発話の基盤化を促進させていることを明らかにした。
(2) 学術論文 "Elicitation of mutual understanding and achievement of coherence: Allo-repetition in Japanese EFL speaking and chat-style writing interactions"(2021年1月刊行)を執筆。外国語としての英語教授法の多様化と学生のニーズへの適応を模索すべく、目標言語で話す・書く際の他者反復の機能を分析した結果、会話では、特定の話題をどのように理解し展開させていたかを確認するために、作文では、書き手が特定の話題を維持し、与えられた情報を確認するために使われた。さらに、他者反復で一体性を実現し、暗示的指導法から明示的指導法へと段階を踏んで、目標言語の話し言葉と書き言葉で相互理解を促す方法を教えることを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の研究計画で提起した問題に対し、口頭発表と国際学術論文への寄稿を通して、一定の成果を発表できている。その際、当初の研究計画では想定していなかったが、相互行為分析を進める中で、他の研究者から意見を伺うことで、非言語行動も視野に入れることの重要性を認識することとなり、それが、「自発的かつ協調的に発信するための教育を提供する」という本研究プロジェクトの学術的課題への解決を後押しする結果となった。
その一方で、COVID-19の収束が見えない状況がデータ収集や研究成果発表を阻んだのも事実である。特に、2020年度は、本研究プロジェクトの本来の最終年度であり、はじめは、一連の研究を通じ、「チャット形式作文の導入によるスピーキング教育への効果」を提起して、成果物をまとめるという研究計画を立てていた。ところが、COVID-19の蔓延により、チャット形式作文がもたらす教育への効果を裏づける補足データの収集と分析が予想外に進まず、また、当該の研究テーマを発表する予定だった学会が中止となったことで、研究計画の変更と研究期間の延長を決断せざるを得なくなった。
それでも、これまでの研究で得られた知見により、日本人学習者のみが所属する教室での英語の授業から、「国際共通語としての英語」というグローバルな視点を得たと共に、研究対象も、書き言葉と話し言葉の言語面に加えて、そのような相互行為が行われる際の非言語面にも目を向けられたことで、語用論的側面を育むには何が求められているのかを深く考える素地はできたと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度の研究計画を継続する形で、以下4点を推進する。
(1) チャット形式作文を指導に採り入れる前と後で、相手の質問への応答や理解確認の方法が異なるか否かについて、基盤化の観点から明らかにしていく。その際、会話データに加えて、チャット形式作文データでの相互行為も分析対象とする。(2) 今まで収集したデータの被験者間に習熟度の差があることから、創作文活動の導入によって、この習熟度の差が会話の上達への貢献度に影響を及ぼすか否かについて検証する。その際、会話での話し手の交替方法に膨らみが増し、円滑なやりとりができたかという点に着目する。(3) データ解釈や考察の妥当性や説得力を高めるべく、語用論・社会言語学・会話分析に加え、創作文活動を含めた英語教育や異言語(異文化)コミュニケーション教育に関連する文献を拡充させる。(4) 関連分野の学会や研究会などで定期的に研究の進捗状況を報告し、他の研究者から受けた助言をもとに、国内外の複数の学会誌に投稿する。
なお、2021年度が当該プロジェクトの最終年度にあたるため、創作文活動を採り入れた会話指導法を広く実践していくには何が必要かを、総括として考察する。その際、学生の習熟度に合わせ、より自発的に相互行為を達成させるにはどのような方法が効果的かという視点に立ち、暗示的指導(気づきの醸成)・明示的指導(パターン学習)との併用も視野に入れ、内容を膨らませたやりとりで場面に即した話し手の交替が成果として現れる方法は何なのか、その解答への手掛かりを提供していきたい。さらに、研究代表者は、2021年度に工学系大学から文系女子大学へ異動し、属性が大きく異なる学生を指導する貴重な経験を得た。その点をふまえ、新任校でもチャット形式作文をスピーキング教育に導入し、この教育法がどの程度まで普遍的に適応できるものなのかについても検証を進めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、COVID-19が蔓延し、その収束が見えないことにより、対面での作業が必要となる会話や作文のデータ収集や被験者へのフォローアップインタビューが思うように進まなかったこと、また、研究成果を発表する場として参加を予定していた国際学会の中止が決まったことが挙げられる。
次年度の使用計画については、引き続きCOVID-19の感染拡大が懸念されている状況であるが、オンラインで実施される国際学会での発表が3件(JALT PanSIG [全国語学教育学会分野別研究部会]、IPrA [国際語用論学会]、AILA [国際応用言語学会])決定しているので、そちらでの研究成果発表、ならびに、国内外の研究者との意見交換を通じて、チャット形式作文をスピーキング教育に採り入れる有効性とその教授法について、より広い視野から考察を深める。その上で、データの補充が難しい状況が続くと考えられるため、これまでの成果を国内外の学会誌に投稿する費用にも充てる。
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