2021 Fiscal Year Research-status Report
A proposal of a speaking/writing integrated instruction method to teach English conversation to Japanese EFL learners
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18K00886
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
竹田 らら 昭和女子大学, 全学共通教育センター, 准教授 (80740109)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 英会話指導 / 創作文活動 / チャット形式作文 / 非言語行動 / 相互行為 / 他者反復 / 基盤化 / 語用論的側面 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、前年度までに収集して書き起こしたデータについて、チャット形式作文を導入する前後で学習者の英語会話(特に、他者反復【相手の発話全体かその一部の反復】の使われ方)で起きた変化を分析し、その結果を報告した。以下、主な研究実績を挙げる。
(1) "Chat-style writing in teaching conversation":日本人英語学習者14組の会話を分析し、チャット形式作文を指導に組み込む前後で、語用論の面から、英語による会話の方法にみる類似点と相違点を定性的に分析した。その際、質問に答える発話と、あいづちや対話者の理解確認のために用いられる他者反復に焦点を当てた。分析の結果、チャット形式作文の採用後に行われた会話は、質問への回答の量と内容に膨らみが見られ、聞き手による他者反復の数がわずかに減少した。しかし、英語の表現が上手く使えず、日本語に戻る例も散見された。さらに、会話と作文の類似点と相違点を考慮し、チャット形式作文が会話指導にどの程度貢献できるかを考察した。
(2) "Topic development through allo-repetition in EFL-speaking and chat-style writing: From the viewpoint of dependency and creativity in context":対話者が相互理解を構築し促進させる方法を解明する手立てとなる「共通基盤」(Clark, 1996) を枠組に、日本人英語学習者ペアによる会話とチャット形式作文で見られた他者反復が話題展開にどういった形で貢献するのかに着目した。録画・録音資料を分析した結果、話し手は、他者反復を連続させて使用し、内容確認、確認要求、理解表示などを行うことにより、相互行為を調整して、展開させていくことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究計画で提起した問題に対し、口頭発表と国際学術論文への寄稿を通して、一定の成果を発表できている。その際、前年度には達成できなかった「チャット形式作文の導入による英語会話教育への効果」についても口頭発表後に査読付論文集へ投稿し、「2022年度中の刊行」ということで受理された。 しかしながら、依然として、COVID-19の影響下、対面環境での会話演習授業が完全に再開されたとは言い難い。そのため、現勤務校における相互行為に関連するデータ収集([1] 日本人学習者のみが所属する教室での英語の授業、[2] テンプル大学ジャパン<本学の連携校>への留学生と本学の日本人学生による教室での英語の授業)や研究成果の発表が円滑に進められていないのも事実である。 一方、大学教育でも、卒業後に直面する世界でも、様々な国や地域の人たちとコミュニケーションをとって学びや企画などを進めていく必要性が高い状況に変わりはない。そこで、本課題下での一連の研究では、「国際共通語としての英語」というグローバルな視点から相互行為を見つめ、その成果を英語教育に役立てていく重要性を提起してきた。 この提言が「グローバル人材の育成」にもつながることから、今後は、相互行為での書き言葉と話し言葉の使用や、それに付随する非言語面(視線、手振りなど)との共起にも目を向け、日本語母語話者と英語母語話者による語用論的側面での類似点や相違点をわかりやすく示し、日本語母語話者が英語で語用論的側面を理解して使いこなすには何が求められているのかについて、「研究成果の発表」のみならず、「学生への指導」という形でも発信していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度の研究計画を継続する形で、以下4点を推進する。
(1) チャット形式作文を指導に採り入れる前と後で、他者反復による相手の質問への応答や理解確認の方法のみならず、重複発話などで相手の発話へ共感を示す方法が異なるか否かについても、基盤化の観点から明らかにしていく。その際、会話データやチャット形式作文データに加え、非言語行動での相互行為も分析対象とする。(2) 当該プロジェクトの最終年度にあたり、チャット形式作文活動を採り入れた会話指導法を広く実践していく上で必要なことを、総括として考察する。その際、現勤務校で習熟度の異なるクラスを担当していることから、学生の習熟度に合わせて、内容を膨らませつつ場面に即した話し手交替が成果として現れる方法は何なのか、その解答への手掛かりを模索していく。(3) 今までの研究報告について他の研究者から受けた助言をもとに、国内外の学会誌に投稿する。(4) 日本人英語学習者を指導するにあたり、英語母語話者との会話を膨らませていくためにはどのような事項を含めたらよいか。本学の連携校(テンプル大学ジャパンなど)で学ぶ英語母語話者の学生と対話する機会を設け、そのデータ分析を通して、上述の問題提起に対する解答への手掛かりを模索していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、COVID-19の収束が見えないことで、対面での会話演習や作文演習のデータ収集や被験者へのフォローアップインタビューが滞ったことが挙げられる。
ただ、次年度は当該補助事業の最終年度にあたることから、2021年度に国際学会で発表した研究のうち、英語母語話者同士、日本語母語話者同士の母語による会話に見られる重複発話と目線や手振りの共起を扱ったIPrA [国際語用論学会]での報告内容や、2020年度の実施ではあったが、1つの会話データの緻密な分析を通して他者反復と目線や手振りとの共起を扱った日本女子大学学術シンポジウムでの報告内容について、国内外の学会誌への投稿に向けて精査し、その過程にて、英語母語話者と日本語母語話者で英語や日本語で会話を行った場合に同様の共起が見られるかといった、次の課題につなげられるような研究への費用にも充てる。
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