英領アジアにおける自然・環境保護ネットワークの形成と政策展開

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K00909
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 佐久間 亮 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 教授 (30231335)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 野生動物保護ネットワーク / カジランガ国立公園 / ダージリン自然誌協会 / ボンベイ自然誌協会 / セイロン野生動物保護協会

Outline of Annual Research Achievements

本研究は英領インドおよびスリランカにおける野生動物、自然・環境保護運動の展開を検証し、英領アジアにおける保護運動の全体像を明らかにしようとするものである。４年計画の２年目として、以下の計画のもとに研究を遂行した。１）英領インドにおける野生動物保護ネットワークの実態を把握するために、Ceylon Game Protection Society、Darjeeling Natural History Society、Bombay Natural History Society について史料を収集すること。２）カジランガ国立公園について先行研究（地方史家によるもの）を入手し、その形成前史について検証すること。3）カジランガ国立公園の形成・発展と 1）で把握しつつあるネットワークとの関連を検証すること。
１）については、 関連資料をBritish Library などでほぼ入手し終え、分析作業に着手した。この英領時代に形成された保護論者のネットワークが１９３０，４０年代に積極的な保護運動の担い手となったことなどが明らかになりつつある。２）についても順調に文献を入手し、分析を進めている。３）カジランガ国立公園形成に関する論文、関連資料の一部を入手し、公園設立ととりわけ、Bombay Natural History Societyとの関わり、さらにはこの団体とロンドンに拠点を置くFauna Preservation Society との緊密な人的関係、情報交換の分析を行い、当国立公園形成の保護運動全体の中での位置づけが明らかになりつつある。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

英領インドにおける野生動物保護ネットワークの全体像、およびこれと英本国の野生動物保護ネットワークとの関連が明らかになりつつある。さらに、カジランガ国立公園設立前史とこのネットワークとの関連、この国立公園形成の保護運動の中での位置づけが明らかになりつつある。
その一方で、1930年代、40年代のインドにおける保護運動の他の局面、とりわけマナス国立公園の前史について史料が充分に収集できず、この点について方向転換を余儀なくされているということがあり、概ね順調という判断をした。

Strategy for Future Research Activity

今後も予定どおり研究を進めていきたい。とりわけ、1930年代、40年代のカジランガ保護区の状況について、史料収集に務めたい。しかし、本年度はイギリスのみならず、インドのNational Archives of India での史料収集を予定しているが、現況では渡航困難が予想される。
そこで、すでに史料収集が終了しつつあるインド野生動物保護ネットワークと他の英領アジア（とりわけ英領マラヤ）における保護論者のネットワークの解明に力点を移して研究を進めることになる可能性がある。

Causes of Carryover

本研究の費用は、その多くが海外（英、インド）文書館等での史料収集のための旅費に充てられる。研究計画策定時点で、3年目にも80万円超の旅費を必要と考えていたが、実際の支給額（直接経費分）は不足していたので、設備備品費支出等を節約して、3年目の旅費に補充できるように考えた。そのため、32万円ほどの余剰が生じた。しかし、本年はコロナ禍により、海外渡航が困難であることが予想され、余剰が生じた場合は翌年に繰り越す可能性がある。