2021 Fiscal Year Research-status Report
近現代国家における先住民の包摂とその影響―北米(米加)ボーダーランズの事例から
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18K00915
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
岩崎 佳孝 甲南女子大学, 国際学部, 准教授 (90340835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ボーダーランズ / ボーダー / 国境 / 先住民 / アメリカ史 / カナダ史 / ネーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現代のアメリカ合衆国とカナダで先住民集団(部族)が抱える重大な諸問題の多くが、18世紀末から20世紀初頭の両国家への統合過程で先住民社会の実態が大きく変容したことによってもたらされたと考え、それについて歴史学的に検証を行うことを目的とする。当初3年間でまとめる方針であったが、二年にわたり新型コロナウィルス感染拡大による海外渡航調査がかなわなかったため、さらにもう1年延長し、22年度も継続して実施した。 既存研究では先住民集団を既定のものとし、かつ国毎に論じられることが多かったが、本研究では米加国境を跨ぐ領域(ボーダーランズ)を生活圏とする先住民集団が19世紀以降いかに両国家「内」先住民として包摂され、その結果実体の変容を強いられるに至ったのかという点を議論する。具体的には1)合衆国とカナダによる国内への先住民集団の包摂構想と、2)ボーダーランズの先住民集団の1)に対する反応の結果としての実体の変容という二点から、両国家内の先住民集団が負う現在の諸問題の要因を明らかにし、そこから国家と先住民の適切な関係構築のための知見と方策を見出す。 2021年度は、19世紀当時の北米先住民社会の実態について、従来着目されることが少なかった「女性」の立場から検討すると同時に、19世紀後半に合衆国の先住民政策に武力抵抗しカナダに避難したもののカナダ政府より「アメリカ」先住民として受容されず合衆国保留地に帰還せざるを得なかった先住民集団ラコタ(Lakota)に着目し、両国の国家統合上前提された「先住民」がいかなるものであったのか、それに先住民の側はどのように反応したのかについて精査した。また、現在の北米先住民社会の国家内での位置づけについても、「刑事裁判権」の観点から整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」で述べたように、本研究は当初3年間でまとめる方針であったが、二年にわたり新型コロナウィルス感染拡大による海外渡航調査がかなわなかったため、さらにもう1年延長し、22年度も継続して実施した。 その際に海外渡航調査に代わるものとして、2021年度は上記に述べたように19世紀当時の北米先住民社会の実態について、従来着目されることが少なかった「女性」の立場から検討し、また現在の北米先住民社会の国家内での位置づけについて、「刑事裁判権」の観点から整理した。これによって、研究主題を巡ってより多角的な視点から新しい研究領域に取り組んむことができた。さらに、19世紀後半に合衆国の先住民政策に武力抵抗しカナダに避難したもののカナダ政府より「アメリカ」先住民として受容されず合衆国保留地に帰還せざるを得なかった先住民集団ラコタ(Lakota)について一層研究を進め、両国の国家統合上前提された「先住民」がいかなるものであったのか、それに先住民の側はどのように反応したのかについて精査することができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大により、アメリカ合衆国およびカナダにおけるフィールド調査、資料収集の実施が不透明な状況にあるため、当面は引き続き国内において実施可能な範囲で、昨年度の研究計画を継続する。 本年度は以下の論点に即して考察を進め、上記の本研究課題を分析的に検証する。 ・19世紀中葉~20世紀初頭における米加ボーダーランズの先住民集団の四事例の研究を行い、両国でどのような先住民包摂論理が発動され、先住民側はこれにどのように反応し、そのことが現状にいかなる影響を及ぼしたのかという問題に接近する。 ・南北戦争において南部連合国に加担したインディアン・テリトリーの先住民集団が、連邦国家を二分する戦争において自己をどのように位置づけようとしていたのかについて、上記事例との比較を行うために検討する。 ・以上の主題に基づく研究成果を適宜取りまとめ、研究報告を適宜行うとともに、学術書、学術論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大のため、当初予定していた海外及び国内における研究調査が実施できなかったため。
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