2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K00922
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 昭仁 東京大学, 地震研究所, 助教 (50528924)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 都市構造 / 被害発生場所 / 家屋被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近世都市を襲った地震による被害発生場所と当時の都市構造との関係について、史料に被害記述が散見できない場所についても検討の対象とし、被害発生場所に限定された従来の研究では把握できない、都市域全体における地震被害の実態解明を目指している。そこで、都市域に密集して数多く分布する家屋を対象として、信頼性の高い複数の日記史料から地震の揺れ方や被害状況の表記を抽出して分類し、地震による家屋被害の様相とその要因について、当時の家屋の構造を踏まえて検討した。 その結果、同じ街区内における地震による家屋被害の差異には、地震の揺れ方の大小や強弱だけでなく、揺れを受けた家屋の規模の大小や形態の相違も関係していたと考えられる。特に、家屋の屋根の大きさや材質の違いは、地震による揺れを受けた際の家屋被害に少なからず影響を及ぼしており、重い屋根材を用いた大きな屋根を有する家屋ほど地震の際の被害が大きくなったと考える。このように、近世都市における地震被害について、都市構造と被害発生場所との関係だけでなく、都市の街区を形成する家屋の形態と地震被害との関係についても検討を進め、都市構造の多様性に起因する地震被害の多様化の事例を提示することができた。 これらの検討に用いるために、地震被害について記されている信頼性の高い日記史料の調査・収集や、地震による被害発生場所や当時の家屋・都市構造に関連する史資料の調査・収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世都市を襲った地震による被害について、当時の都市構造と被害発生場所との関係だけでなく、都市の街区を形成していた当時の家屋の形態と地震被害との関係についても検討し、都市構造の多様性に基づく地震被害の多様化の実態を導き出すことができた。これによって、近世都市京都の大半の面積を占めていた家屋の被害状況を対象として、地震被害が僅少または殆ど皆無であった場所に関する範囲や被害要因の検討が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
建造物が密集していた近世京都を対象とし、地震被害が僅少または殆ど皆無であった場所に関して、家屋だけでなく寺社についてもその被害範囲や要因について検討する。既に作成している近世京都の歴史地震を対象とした地理情報システムに、新たに調査・検討した当該期の家屋や寺社に関する様々なデータを追加していく。この地理情報システムを活用して、16世紀末から19世紀半ばに至る京都の都市域を対象に、地震被害の要因と実態解明を進める。
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Research Products
(2 results)