2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K00924
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
加藤 千香子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (40202014)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植民地主義 / 戦後史 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後日本の植民地主義の忘却をテーマとする本研究においては、これまでの研究を通じて以下の3点の課題を見出した。①1950年代の戦後日本社会における植民地主義忘却の過程 ②1970年代における植民地主義の想起と克服に向けての動き、③植民地主義とジェンダーの緊密な関係 である。本年度はこの3点を重視し研究を行なった。 ①に関しては、植民地主義の忘却が戦後日本における「国民」の主体形成のプロセスと表裏の関係にあることに注目し、民衆の主体形成と「国民」形成の問題について、民衆の生活記録運動などを対象にして調査、研究を進めた。その考察の一部は、第39回日本教育史研究会サマーセミナー「生活を綴る―戦後民衆の主体形成―」でコメンテーターとして報告を行なった。また、40-50年代の地方新聞記事の収集調査も継続して行った。 ②については、1960年代後半から70年代における植民地主義の克服の可能性を考察するため、「近代化」を問う思想・研究潮流動向に視野を広げた。具体的には、1969年に鶴見和子が主宰者として立ち上げた近代化論再検討研究会やその中から提起された「内発的発展論」について調査を進め、また当該期の公害や地域開発に抗する論理やその運動にも着目した。 ③に関しては、①とかかわって特に戦後日本の主体形成と男性性ジェンダーとの関わりやそれが女性や非「国民」の他者化、植民地主義の再生産につながることに注目し、それらについての言説資料の収集にあたった。 以上、本年度においては課題がより明確になったといえるが、それは当初の研究計画を超える部分もあるため、研究期間を延長し継続してこの課題を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断するが、それは、研究を進めていく過程で当初立てた研究計画においては組み込んでいなかった視角や課題に気づくこととなったためである。今後は当初の計画に加えて、それらの課題にも取り組むこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で書いたように、本研究を進めていく過程で、当初立てた研究計画においては組み込んでいなかった視角や課題に気づくこととなった。それは特に、植民地主義の忘却につながる1950年代の「国民」の主体形成の問題と、1960年代末から70年代にかけての思想潮流や運動の論理に見られる植民地主義の克服の可能性に関わる問題であるが、今後は当初の計画に加えて、それらの課題にも取り組むこととしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、第一には、今年度もコロナ禍が継続し資料収集のための地方への出張には制限があったことである。また第二の理由として、当初の研究計画よりも課題が広がったため次年度も継続して経費を使う必要が生じたことがあげられる。 次年度においては、国内出張経費とともに、新たな課題のための図書・資料購入費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)