2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K00928
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
今津 勝紀 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20269971)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人口動態 / シミュレーション / 飢饉 / 疫病 / 災害 / 日本古代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、時系列分析と空間分析により律令制初期から平安時代前期、平安時代中期・後期への人口動態を明らかにすることで、人口がどのように変動し、列島社会がどのように構成されていたかを復原する。人口の時系列変化については、古代の籍帳とりわけ史料的性格の良好な御野国戸籍のセンサスデータをもとにシミュレーションを行い、さらに郷(里)の数、正税論定稲の数、田数などをもとに、旧国を領域とした空間解析を行うことで、人口の空間分布を復原する。時系列分析と空間分析を組み合わせることで、人口動態を具体的に把握したいと考えている。平成30年度は、①時系列分析のセンサスデータとして大宝二年御野国賀茂郡半布里戸籍のデータベースを整備する。②半布里戸籍のデータを基礎に男女総計の人工曲線、計算上の人口ピラミッドを最小二乗法で作成し、人口曲線にもとづき、年齢別死亡確率を算出する。③同じく半布里戸籍のデータを基礎に、母子の年齢差をもとに出産曲線を最小二乗法により作成し、年齢別の出産確率を算出する。④死亡率・出生率を変化させ、100年(8世紀から9世紀初頭に相当)・300年(8世紀から11世紀初頭に相当)・900年(8世紀から17世紀初頭に相当)の人口変動シミュレーションを実施し、時系列分析を行う。などなどに取り組んだ。関連して、平成30年9月22日(土)・23日(日)に関係者を集めての研究会を岡山大学にて実施し、今津勝紀「脚夫・乞食・死穢」を報告した。都市への人の集中と分散が疫病の蔓延と関連すること、古代の穢観念の核心がそうした社会のあり方に根ざすことを考えた。平成31年1月12日(土)・13日(日)に神戸大学にて開催された研究会に、関係する研究者を招集して討議するとともに、「日本古代における生存と救済の問題」を報告し、古代の貧富の格差、奴隷、乞食について議論を深めた。いずれも平成31年度に公表予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果は、「脚夫・乞食・死穢」(佐々木虔一・森田喜久男・武廣亮平編『日本古代の輸送と道路』八木書店、2019.5)、「日本古代の気象と王権―九世紀後半の全般的危機―」(中塚武編『気候変動から読み直す日本史』第三巻、臨川書店、2019.8)、「日本古代における生存と救済の問題」(『岡山大学文学部紀要』71 2019.12)にて発表を予定しており、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
⑤空間分析のための旧国単位のシェープファイルを整備する(プロトタイプを改変の予定)。⑥郷(里)数・正税論定稲数・田数の相関を計算するとともに、人口を代替しうる数値をえる。⑦上記⑥の数値をGISにより算出した旧国の面積や列島のDigital Elevation Model(DEM)により作成した旧国単位の可耕地面積などで除すことで、人口密度を算出する。⑧旧国単位の人口密度を基礎に、旧国の中心点を基準とした分布中心点を求めるとともに、標準偏差楕円を計算することで人口分布の指向性を再現する。研究報告は、2019.5.27日本地球惑星科学連合 2019年度大会 今津勝紀・中塚武「高解像度気候復原による日本古代の気候変動と国家・社会の変容」(於:幕張メッセ)2019.7.7歴史学入門講座「日本古代史研究の方法的模索-生存の問題を中心に-」(於:大阪歴史博物館)を予定している。昨年に続き、研究会を二回開催の予定。
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Causes of Carryover |
西日本豪雨への史料ネット対応などにより、忙殺されたため調査のための出張が十分にできなかったことによる。
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Research Products
(1 results)