2019 Fiscal Year Research-status Report
宮内庁所蔵『王公族実録資料』の機密文書に関する研究:閔妃暗殺事件後の大韓帝国皇室
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18K00941
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
新城 道彦 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (40553558)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 王公族実録資料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、宮内省(現宮内庁)が『王公族実録』を編修するために収集した膨大な史料群である『王公族実録資料』を解読・データ化して一般に公開するとともに、膨大な史料群の中に埋もれた機密文書を用いて、韓国併合直前の大韓帝国皇室の動向、具体的には閔妃暗殺事件以降の大韓帝国皇室における権力闘争、およびそれに日本がどのようにかかわっていたのかを解明することにある。 本年度は昨年度入力した『李太王実録資料』データの修正と未解読部分の加筆を進めた。 これと並行して、高永根について研究を進めた。具体的には「秘第一二八号」「秘第二ノ一二八号」「機第二三〇号ノ三」「秘第三五五号」(『要視察外国人挙動関係雑纂―韓国人ノ部―』外交史料館所蔵)〈国史編纂委員会編『要視察韓国人挙動』第2巻、2001年〉、チョンジョンミョン「高永根研究」(延世大学校教育大学院修士学位論文、1986年提出)、イジョンガク『刺客高永根の明成皇后復讐記』(東亜日報社、2009年)などを参考に、日本亡命中の高永根の動向を明らかにした。 今後は「2 明治36年12月3日から明治37年2月21日」(『在本邦韓国亡命者禹範善同国人高永根魯允明等ニ於テ殺害一件』外交史料館所蔵)、「禹範善殺害ノ陰謀露顕ノ件」(外務省編『日本外交文書』第36巻第1冊)、「禹範善殺害事件取調報告通牒ノ件」(『日本外交文書』第36巻第1冊)等の史料を用いて高永根と尹孝定の関係性や高永根が一人で禹範善を暗殺した背景を考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①『李太王実録資料』のデータを見直して修正・加筆を進めた。 具体的には、第12巻の資料番号108「李太王日省緑五百十六」件名「召見駐箚日本公使 高永喜于咸寧殿」(癸卯正月19日(乙亥))から資料番号22「乙未亡命者関係書類」件名「機密第一一号千呉両人措置方ニ関スル件」(明治35年5月1日、林公使から加藤領事宛)および第13巻の資料番号23「乙未亡命者関係記録」件名「機密第六二号亡命者兪吉濬ノ使嗾ニ系ハル陰謀暴露ノ件ニ関スル具申」(明治35年5月2日、林権助から小村寿太郎宛)から資料番号49「乙未凶命者関係書類」件名「電報」(明治36年11月30、林権助から小村寿太郎宛)のデータ化を進めた。『李太王実録資料』編修の過程で電報資料を多数収集し、参考にしていたことが明らかとなった。 ②高永根関連資料の調査に入り、まだ一部であるが「高永根の転向と日本への亡命」をテーマにまとめることができた。その際にはチョンジョンミョン「高永根研究」(延世大学校教育大学院修士学位論文、1986年提出)やイジョンガク『刺客高永根の明成皇后復讐記』(東亜日報社、2009年)や外交史料館の『要視察外国人挙動関係雑纂―韓国人ノ部―』などを参考とした。 高永根の大韓帝国時代の動向、特に高宗の信任を得て皇国協会の副会長に就任し、のちに皇国協会を退会して万民共同会の会長に就いた背景および高宗の怒りを買って日本に亡命するに至った理由を把握できたので、おおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
①『李太王実録資料』の最終巻である14巻のデータを進めていく。さらに、これまでのデータ化で読解できなかった部分や誤読していた部分の修正を進めていく。特に第5巻資料番号1「景福宮營建日記一」(年月日不明)から第6巻資料番号194「景福宮營建日記九」(戊辰7月初4日)および第9巻資料番号43「李太王日省緑五十三」件名「命稱謝回咨撰出轉致北京[口の下に力]具書契傳及東武」(丁卯3月初7日(辛酉))から第11巻資料番号107「李太王日省緑五百十四」件名「以金昇圭爲特命全權公使命駐箚日本國」(壬寅11月30日(丙戌))は漢文資料が続き、難解な文字が多いので、誤記入の可能性が高い。何度も見直しをして修正する必要がある。 ②『李太王実録資料』所収の資料および関連資料を渉猟して高永根が禹範善を暗殺した背景を考察し、論文としてまとめる。 『李太王実録資料』には第12巻資料番号2「乙未凶命者関係書類」件名「布告文」(年月日不明)から第13巻資料番号49「乙未凶命者関係書類」件名「電報」(明治36年11月30、林権助から小村寿太郎宛)まで高永根による禹範善暗殺事件関連の資料が多数含まれている。これらを解読するとともに、「禹範善殺害ノ陰謀露顕ノ件」(外務省編『日本外交文書』第36巻第1冊)などの外務省記録や、「2 明治36年12月3日から明治37年2月21日」(『在本邦韓国亡命者禹範善同国人高永根魯允明等ニ於テ殺害一件』外交史料館所蔵)などの控訴判決書、「禹範善殺害事件取調報告通牒ノ件」(『日本外交文書』第36巻第1冊)などの取調概要報告を利用して分析を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度の繰越金があったために「次年度使用額」が生じたが、本年度に限ってみれば予算に沿う形で進めることができた。昨年度の繰越金に関しては資料調査の旅費に使用することを考えていたが、コロナウイルスの影響で中止した。次年度も旅費として使用することが難しい場合は、資料購入に使いたい。
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Research Products
(1 results)