2023 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Study on the Reorganization Process of the Consumer Movement in the 1970s and 1980s
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18K00946
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
原山 浩介 日本大学, 法学部, 教授 (50413894)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 消費者運動 / 革新 / 労働運動 / 合成洗剤 / 食品添加物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のまとめに際し、比較対象として、1970年代~80年代の、旧来の告発型の消費者運動を継承する革新系の諸団体の動向を把握する必要が生じた。これまでの調査で、この動向が70年代以降の関西の新興の消費者運動に影を落としていることは断片的に読み取れたのだが、そこから革新系の消費者運動の全体像を見出すことは、関西では党派間の分断が強く混沌としていて難しかった。そのため、全国規模の革新系の動向がより浮かび上がりやすい資料群を対象とし、別の地域のケーススタディを行うこととし、社会党系の諸団体の資料を網羅的に所蔵している北海道労働資料センターにおける資料調査を行った。 革新系の消費者運動は、労働運動との利害衝突が起こらない課題設定で大衆動員を行っており、それ故に大衆消費社会型の、企業・行政への要求を軸としたものとなった。また、北海道では1970年代から革新系諸団体の連帯が党派を超えて作られ、80年代になると全国消団連を軸に全国レベルの革新系の結集も図られた。 革新系の消費者運動のなかにも、公害・環境問題に動機づけられた論点が持ち込まれようとした経過があり、そのうち食品添加物の規制緩和反対や合成洗剤追放運動などは全国・地域の双方の水準で取り組まれた。ただ、消費生活そのものへの自省的な問い直しへの接続は、新興の消費者団体と比較すると微温的なものにとどまった。 関西での調査対象と、革新系の全国レベルの、それぞれの運動は、1990年代に入るといずれも次第にその勢いを落としていく。そこには、市場における選択肢の多様化によって個人レベルでの対応が可能になり、消費者運動における共通の課題を見出しにくくなったことが介在している。つまり、1970年代~80年代の消費者運動を理解するためには、その崩壊要因への着眼がさらに必要となるのであり、本研究の実証的な成果は、その考察への道筋をつけるものとなった。
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